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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その6 常識という名の偏見①

RGタイムズとヨネヤマの危機

その6 

常識という名の偏見①




<登場人物紹介②>

IMG_000387.jpg

1、レティシア
悩めるニューロノイドだったのも今は昔。
某シリーズ一家の父役だった男の母なので、リリス(某シリーズ一家の長女)からすると、お祖母ちゃんです。
一度リリスは怒った時に「このクソババア」と言ったら、すごいことになりました。あえて、どうすごいことになったかは説明しません。筆舌に尽くしがたし。
画像は旧PCの中で眠っていたrisumasuさんが描いたレティシアです。




2、三日探偵の造詣

ロシア人っぽい名前で何にしようかなと思って本棚を見たら「罪と罰」を発見。ドストエフスキーつながりで「カラマーゾフの兄弟」から取りました。安易だね。

******************


 三日探偵は1ヶ月前まではリリス風にいうのであれば四日探偵だったし、3ヶ月前までは五日探偵だった。けれど今は確かに三日探偵である。何故そうなのかは誰も知らない。
 三日探偵は名前をニコライ・カラマゾフという。その名前故によく「兄弟はいますか?」と聞かれる。そう聞かれるたびにニコライは一人っ子である自分を残念に思う――時にドストエフスキーを呪いながら。
 三日探偵は、探偵という職業に関して世間一般が想像するようなイメージ――気だるげに煙草を吸い、ウィスキーを嗜み、ビートルに乗るような――を裏切って規則正しい生活を送っている。故に今日も人工太陽が昇り始める早朝に目覚め、歯を磨き、髭を剃り、ホテルの近くにあった早朝から開いているカフェでコーヒーを飲みながら依頼人を待っている。本日もどんな事情があろうと、標準時における22時までには床につくつもりでいる。それが三日探偵ことニコライ・カラマゾフの流儀だった。


******************


「ったく、それでこのワタシを出し抜いたつもりだっていうんだから、甘いのよ」
 足早に仕事へ向かう人でごった返している駅のホームから降り立つ二人を見ながら、女はにたりと笑う。キルトのジャケットに身を包み、ボンボンのついたカラフルなニット帽からは軽やかに跳ねる襟足が見えた。オペラグラスで――肉眼で見てさほど変わらなくても、形に拘ったらしい――見た先には地図で道を確認している真っ黒なロングコートを着ているクライスがいた。そんなことをしているのは早朝から始発に乗って出発する二人を狸寝入りをして見過ごし、その後にかっぱらったトレーサーで先回りをして待っていたレティシアだった。何やら違法登録のトレーサーが早朝の国道を制限速度超過で走っていたことは事件になっていたらしいが、彼女には知ったこっちゃない。
 ――何故レティシアがここにいるのか?
 酔っ払ったフリをするのはレティシアの得意技である。強制スパルタ訓練で無理やりストレスをかけているのだから、たまには寝たフリで二人きりにしてやろうという心意気だったらしい。途中で本当に寝ていたが、肝心なところで目覚めていた。
「怪しいムードになったら、うーんとか唸ってみてびびらせてやろうとほくそ笑んでいたのに、この”ワタシ”を置いて出かける算段をしているってどういうことよ!!……あら、ごめんなさい、なんでもないから……いけないいけない、また独り言が」
 突如道のど真ん中で女があげた怒りの声に驚き、周りにいた一般人が見えない壁で遮られているようにレティシアを避けていた。その冷たい世間の態度にレティシアは傷ついたが、驚異的な再生速度で立ち直る。常人には全く気にしていないように見えたかもしれないが、それは気のせいである。鋼鉄の心を持つ彼女でも傷つくことは多々ある。ただし立ち直る速度はニューロノイド一速い。
 クライスは行き先を把握し、首周りで何度巻いても余っているオレンジ色のマフラーを揺らしながらリリスが後ろからついていくという形で動き出す。そこでレティシアはオペラグラスを畳み、背伸びをした。
「精々今のうちに楽しんでおきなさい。帰ったらいつもの3倍はしごいてやるんだから」
 二人に割りこんで邪魔をするほど無粋でもなければ暇の過ごし方を知らないわけでもない。彼女には神鋼に所属していたマスターがいた。その関係でこの辺は自分の庭のようなものである。お腹も空いたし、とりあえずマーの店という美味いフォーを出してくれる店で朝飯にしようと思っていた。レティシアはGVW一歩行速度の速いというオーサカシティーの市民をかきわけて、記憶を頼りに屋台通りへ向かったのだった……。


******************


 ボク達が待ち合わせの喫茶店に辿り着いたのは、かろうじてまだ朝といっても差し支えのない時間だった。平日の為か、人が疎らな店内のカフェテラスで一人本を――白痴という題が目に入った――ある一定の距離を置いて読んでいる男がいる。推定60前後の男は本に目をやったままコーヒーに口をつけた。けして美味くもなく、不味くもないといった態で音を立てずにカップソーサーの上に置く。白皙の肌を持ち削げた頬から骨が浮き出ている顔から細身の身体を想起させたが、糊の利いたグレイのスーツの中身は軍人のように鍛え抜かれていることがわかった。彼こそがニコライ・カラマゾフであるのは間違いなかった。
 いつもは間接的に依頼をするだけなので本人を見るのは実は初めてだった。それに彼は合図代わりの本――ドフトエフスキー著作のどれかという指定だった――を読んでいる。……それにしても、外見からはそんなウィットに富んだ人物には見えないけどね。
 そっと気配を殺して、ボクが彼の座るテーブルの横に立つと、紳士は本を置いた。
「ニコライさんですか?」
 その動作に怒っているのではないかと訝りながら尋ねる。
「如何にも」
 眉を潜めてニコライ氏は答えた。そして、ボクのほうを向き直り、不意打ちのように顔を崩して微笑む。
「お初にお目にかかる、クライスさん。ニコライ・カラマゾフと言います」
 二重、三重の意味でボクは見事に不意をつかれた。通信機越しの声と全く違う。それに態度も、通信の時と違い、粗野な印象を裏切って紳士的だった。
 ニコライさんが会釈をして、ボクは慌てて返した。
「はじめまして、クライス・ベルンハーケンです。……こっちは一緒に同居している子で、リリスといいます」
「ほう、これはこれは。素敵なカップルですね」
 ボクとリリスを交互に見て、ニコライ氏はそう発言した。控えていたリリスも挨拶をして、とりあえずの対面は成ったといえるだろう。
「立ち話ではなんでしょうから、どうぞ」
 ニコライ氏はリリスの傍にある椅子を引き、座らせた。
「ありがとうございます……でいいんだよね?」
 リリスは戸惑いながら、椅子に腰掛けた。確かにこの人は彼女の周りにはいないタイプだろうな。どちらかというと、リリスは粗野でありながら礼儀を重んずる体育会系世界の住人だ。ボクも手近な椅子に座り、ウェイトレスにコーヒーを注文する。マイカはオレンジジュースを頼んでいた。
 ニコライさんは穏やかな笑みを浮かべると同時に、そのエメラルドグリーンの瞳の奥でぼく等を隅々まで観察しているようなイメージを抱いた。ボクが勝手に抱いている偏見ではあるが、探偵らしい仕草であるといえた。
「伺った依頼の件ですが」
 ボクとリリスの飲み物が届いたところで、ニコライさんは話を切り出した。
「ヨネヤマ・マサオ氏は殺していませんね。犯人は別にいます」
「へ?もうそこまでわかったのですか?」
 リリスの顔を見ると、ずいぶんと間抜けな顔をしている。きっとボクも似たような顔をしているのだろう。
「もちろん、まだ推理の域は出ていません。ただ十中八九間違いはないと私は考えています」
 隣でリリスの灰色のショートパンツから伸びる脚がもぞもぞと動いている。恐らく、続きを早く聞きたくて焦れているのだろう。
「説明は殺人の起きた、あのホテルの一室でしたほうがわかりやすいでしょう」
 ニコライさんが視線を向けた先には、件の殺人が起きたホテル、ダックスがあった。駅近くのビジネスホテルであるダックスは、ビルの隙間に挟まれるようにして立っていて、こじんまりとしていた。朝ということもあってか、ビジネススーツを来たサラリーマンらしき人が数人、出入り口から出てきている。
「この事件の場合、調書――これは私の情報網から手に入れました――を読み、現場に出向けば、真相の一端を掴むことは容易でした。なのに、警察は真犯人を見逃している。何故だかわかりますか?」
 ボクは首を横に振った。どのような事件が起きたかも、まだあまりわかっていないというのに、わかるわけがない。リリスは大人しくオレンジジュースを飲んでいるが、もう空になっていた。
「常識という名の偏見。全てはこれに尽きます。警察はこんなにも単純な事件だというのに、偏見に捕らわれて真相を見失ってしまった」
 更にニコライさんは白髭をさすりながらにこりと笑い付け足した。
「クライスさん、貴方と同様にね」

 

******************


……続く

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