地熱発電所防衛戦から3日経ち、街道を行く人々の表情は度重なるHHの来襲のせいか一様に暗い。
立て付けが悪い為に開かれることのない窓から外を覗き込み、俺は頬杖をついて何か記事のネタはないかと空っぽの頭を杓子で掻き混ぜていた。無から有が生まれないのは物の道理である。
こうしてメシのタネを空っぽの鍋の底をさらうように、手元のメモに丸をぐるぐると書き続けていた時だった。
3度、ドアのノックを叩く乾いた音がする。呼び鈴が壊れている為の措置だった。俺は鈍重な動作で椅子から身体を起こし、ナメクジが這うように入り口へ向かう。
「どなたですか?」
「ボクです。クライス・ベルンハーケンです」
聞き覚えのある声は確かに記憶の引き出しの中にあるクライスという少年の声と一致していた。若輩ながらトレーサーの操縦もできることから、ガンナー関連の突撃取材のバイトを度々頼んでいたのである。
ドアノブをゆっくり回して開けると、確かにそこには見知った黒髪の少年が立っていた――ただし彼一人ではなかったが。
クライスの背後に隠れるようにして半身を見せて立っているのは見知らぬ少女だった。年齢的にはクライスと同年代だろう。
覇気といったものが感じられないが、これは訳ありだなと思い、俺は観察するような視線を外して来訪者に向き直る。
「とりあえず入りな」
親指を室内に向けて招くとクライスはひとつ頷き、傍らの少女の手を取って狭い薄汚れた我がRGタイムズ社に入ったのだった。
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あの日が終わると、新クールになるまで彼がRGタイムズに入社します。だからどうした!って言われるとなんかありそうでなんもないのですけどね~。
雷神家最終話からつながっている小噺と思っていただければ幸いです。
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■本屋でダラダラ本を見ていたら、文庫本のコーナーで横幅が普通の文庫本の5倍はありそうな本を発見して吹いた。
誰の本だと思ったら、京極夏彦の京極堂シリーズだった。
何故この分厚さなのに上下に分けないのだろうか。文庫本でもこの厚さじゃ持ち歩けないですよ
たぶん日本語マニアでいろんなとこに拘りを見せる京極先生のことだから、分けないのもなんか小難しい理由があるんだろうなぁ。
というより1000ページ以上書いていて語彙が尽きない辺り、プロの小説家はすごいものです。
■エビマヨつくるのにレシピに書いてあったコンデンスミルクがなかったのでカルピス原液を使ってみた。
美味しかったけれど、ちょっとカルピス風味だった。