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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その11 逃走①

RGタイムズとヨネヤマの危機
その11 逃走 ①

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あのブンヤ野朗、なかなか吐きませんね」
 白い無機質なコンクリートを革靴で叩く音がする。スリで捕まったもの、無銭飲食で捕まったもの、つまらないケンカでしょっぴかれた連中――ヨー・ボブスン刑事にとって取るに足らないつまらない罪が狭い廊下にひしめいている。
 ボブスン警部の隣を歩く、今年で3年目の血気盛んな相方である警部補はつまらない仕事だとぼやく。ボブスン警部も始めはなんて簡単なヤマだろうと固く信じていたが、何か小さな棘が刺さったような引っ掛かりを覚えていた。
 ――なんだろうなぁ……この感じ。血の匂いを嗅ぎ取れないんですよねぇ……あのブンヤさんからは。
 ただでさえ細い目を眠っているのではないかというほどに細めるボブスン警部。透明のすりガラスのドアを開け、煙が黙々と立ち込める1階の喫煙スペースまで辿り着き、適当に空いているベンチに二人は腰掛けた。昼を過ぎて夕闇が近づきつつある時間、仕事に疲れた同僚達が一服をぼんやりと楽しんでいる。スペース中央にある、タバコを突っ込まれた灰塗れのアルミ缶がボブスンの目に付いた。
「クロタダ君はこの事件、時間の問題と思いますかねぇ?」
 同僚の黒い肌を持つクロタダ警部補がボブスン警部の煙草に火を灯したところで、おもむろに尋ねてみる。彼は自分の煙草にも火をいれて煙を吐き出してから、つまらないことをつまらなそうに応える。
「犯行が出来た人物がヨネヤマしかいないですから。動機は不分明ですがそれは奴の自供から貰いましょう――それとも何か。ここから驚愕の新事実が彗星のように現れて、どこからか現れた名探偵が解き明かしてくれるというのなら興味深い事件ですよね。……大概のヤマはそんな奇抜な展開を望めないということはボブスン警部のほうがご存知と思いますが」
 全くもってその通りであるという風にボブスン警部は深く頷いた。ただし本心では全てに賛同していたわけでもなかった。確かに刑事の勘などという奇妙なものに頼られるよりは(それもヒヨッコのものは大抵頼りにならない)証拠偏重主義のほうが幾分マシである。その分、クロタダ刑事は今のところボブスンの教育を素直に受けている優等生であると満足できた。
 それでもボブスン警部はこの事件は一本道になっているのではなく、ある種の袋小路に仕組まれているのではないかという疑念を取り去ることが出来ない。9割5分ヨネヤマが犯人であると信じていたが、動機が明瞭でないことがこの疑念を増長させていた。
 二人は言葉もなく、缶コーヒー片手に煙草をくゆらせていた。ボブスン警部がとりあえずのところは疑念を振り払い、職務に忠実にヨネヤマを絞り上げることが重要だと思い直した時だった。
「あ、ボブスン警部いたいた」
 交通課の顔見知りの女巡査がガラス張りのドア越しにボブスンを指差す。巡査は廊下を通り過ぎようとしていたところを戻り、ドアを開けて中に入ってきた。
「どうしました?」
「部署にお客さん来てますよ。ニコライ・カラマーゾフと名乗ればわかるっていってましたけど」
「ほう、ここで彼がでてきましたか……わかりました、すぐ行きます」
 感慨深げにボブスンは細い目を僅かに――本人にとっては大袈裟に――見開いた。実にわかりにくいが、これは彼の驚いたときの仕草みたいなものだった。ボブスン警部は空いたコーヒーの缶に煙草を押し付けて腰をあげると、後ろを振り向く。
「彗星のように新事実と探偵が現れたかもしれないですねぇ……誠に遺憾なことに」
 その言葉を受けたカンダタ警部は何のことやら、と残された吸殻と缶を見つめて、夕闇が迫りつつある空を仰いだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 薄暗い部屋に物のように押し込められてから何日がたったのだろう。ワタシは時間の感覚を失い、未だ流れた血に酔いしれているようなぼんやりとした頭で部屋の一角を見つめ続けていた。
 ワタシは待っていた。この息が詰るような部屋の中でも目立たぬように、己を物と同一視することで存在を殺していた。重苦しい静寂が埃と共に沈殿して澱のようになっている。彼はいずれやってくる。そのときを待っていればいい。ワタシはまたそっと瞼を閉じて幸せな夢の世界へ旅立とうしていた。
 それから身動ぎもしないでただじっとしようとするが疲れていないせいか、思考が流れるようにとめどなく溢れるのを止めることが出来ない。
 ……何時間が過ぎたのだろう。いや、実は1分もたっていないのかもしれない。
「生クリームがたっぷりのったイチゴタルトを……ホールごと食べたいなぁ」
 暗闇に吸い込まれそうになる心を奮い立たせるために、甘いものを幾つも頭の中で思い浮かべる。すると幸せになれるのだから、不思議なものだ。
「……あれ?」
 益体もないことを回すように描いていたとき、ふと空気の流れが変わったことに気付く。恐る恐る瞼を開けると、扉から僅かな光が差し込んでいた。扉を開けた黒い腕がぬっと消えたかと思うと、天から差し込んだ蜘蛛の糸のような光の一筋が見える。
 その光を発見したとき、ワタシの胸の中で喜びがはじけた。やっときた、あの人が、マスターはワタシを見捨てていなかった……!
 長期間同じ体勢でいた為にこわばっている身体を励まして立ち上がる。
 そうだ、あの光の先へ向かえば、うまくやったなって言ってきっとマスターが褒めてくれる。抱きとめてくれる。ワタシを愛してくれる。どんな甘いお菓子よりも幸せになれる、マスターが向けてくれる笑顔へ向かって――進もう、この先へ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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