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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その7 常識という名の偏見②

RGタイムズとヨネヤマの危機 
その7 
常識という名の偏見②


注:この話は推理モノのようでありながら、そうではなく、ミステリーモノのようでありながら、そこはかとなく違い、RGという世界観でなくては成り立たない、どちらかというとSFのようなお話です。

*******************

 人が二人分ほど入る幅の廊下を革靴の音が反響している。ボク達の他にその階層には客らしき人影はなかった。――ただし清掃業務に勤しむロボットはいたが。
 先ほど、喫茶店でニコライさんの言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。ヘンケンという言葉が意味するのは、おそらくボクが抱いている何かに対する先入観のことなのだろう。とんと見当がつかず、さりとて過ちがあるのなら正したいというもどかしさがあるのだ。
 そんなもやもやした気持ちを抱えていると、突如ボクの前にいたリリスが立ち止まる。彼女の前で案内をしているニコライさんが扉の前で立ち止まったからだ。ルームプレートには402号室と書いてあった。

「ここが私の泊まっている部屋です。殺人現場となった302号室はこの部屋のちょうど真下に当たり、部屋の構造もほぼ同じですね」

 喫茶店を後にしたボクらはニコライさんが泊まっている件の現場、ホテルダックスにいる。ビジネスホテルである為か、ダックスではほとんどの部屋がシングルルームである。ニコライさんが先導する形で部屋に入り、続いてリリス、ボクと3人も入ると部屋の中は狭苦しかった。入ってすぐ、3歩ほどの長さの通路の右手にはランドリー、ミニキッチンがあり、左手にはトイレ兼用バスルームの扉がある。唯一の部屋にはバスルームと面してベッドが置いてあり、正面窓側に小さな机と椅子が一つずつ置いてあった。まだ昼間だが、ビルの陰になっていて窓から明かりは差し込んでおらず薄暗い。ベッドの反対側の壁に面してソリビジョン再生装置、ワードロープが設置されている。建物の外観はくたびれていたが、中はそれなりに清潔だった。手入れが行き届いているのだろう。――何の特色もない普通のシングルルーム。それがボクの抱いたこの部屋に対する感想だった。
 この部屋の真下で殺人が起きたというのに、なんとも静かで長閑だった。朝早かったこともあってか、どうにも眠い。こんなことではいけないと、なんとか欠伸を噛み殺すのに腐心する。
 ただバスルームから出てきたリリスが部屋の構造よりも艶やかでヤギのように伸びているヒゲを撫でて、ボク達の観察が終わるのを待っているニコライさんを何度か見ているのが気にかかった。何かついているのかな?
 リリスに続いてボクもバスルームにも入ってみる。正面に洗面台、トイレ、そして右手に浴槽がある。洗面台にはニコライさん本人のものであろう、洗顔剤と電気シェーバー、そして備え付けの歯ブラシが無造作に置いてあった。少々湿気ているのは朝、シャワーを浴びたからだろうか。浴槽のカーテンに水滴がついていることから、その考えは間違いないだろう。
 もう一度さっとバスルーム内部を見回してから出ると、リリスが部屋の中央、ベッドの傍らに立っているニコライさんに話しかけようとしていた。

「この部屋は真下の事件現場を再現しているの?」
「いえ、一緒なのは間取りだけで荷物は私物を置いているだけですよ」
 
 ニコライさんは謹直そうなしまった顔で実務的に答えた。
 確かにこの几帳面そうな紳士が一晩しか使っていないにしては、少々汚いような気がする。小さな鞄から、ペンやノートが零れ落ちそうだったし、リリスが疑問に思ったのはそういうことなのだろうか。

「この部屋に泊まっているのは貴方一人?」
「ええ。昨晩私が一人で泊まりましたが……」
「ねえ」

 腑に落ちない、と眉を潜めた彼女は唸り、びしりと人差し指でニコライさんを指した。ちょっとリリス!と失礼な態度を咎めようとするボクを制して、リリスは言う。

「貴方は誰?」

 ニコライさんをきつく睨みつけるリリス。ボクはその形相に気圧され、彼女に何故そんなことを言うのか問うタイミングを見失う。

「おやおや、怖い目つきですね、お嬢さん。確かに私は喫茶店で名乗りましたよね?ニコライ・カラマゾフ、と」

 銃を突きつけられたかのように、ニコライさんは両手を上げてバンザイをしていた。厳しい目つきのままのリリス。一体、彼女は何故そんなことを言うのだろうか。ボクにはとんと見当がつかず、おろおろすることしかできなかった。


*******************


 絶えず身体にまとわりつく違和感、不快感。人からすれば短いと哂われるだろうけれど、経験。様々な感覚がボク……ワタシに付き纏っていた。
 三日探偵という奇妙な名前を聞いてからどれだけ奇抜な人物なのだろうと期待していたのに、実際にワタシの目の前にいたのは、いつかテレビで見た――確かILBM傘下の会社がスポンサーの探偵ドラマから抜き出てきたかのような探偵だった。豊かな白いヒゲを蓄え、ステッキを椅子に立てかけてスーツを着ている老人。これに加えてシルクハットでも被っていれば、少し古めかしいスタイルの探偵の出来上がり。そう、まるで探偵という服を着ている人のようだった。
 所詮はワタシの思い込み――ニコライ氏の言を借りれば偏見にすぎない。そう思い喫茶店で素直に新鮮な合成蜜柑を絞った爽やかな甘さが喉を潤すジュースを――あれは実に美味しかった――飲んで黙っていたけれど、違和感は拭い去れない。
 違和感が確信に変わったのは、バスルームを覗いた時だった。そしてその確信を裏付ける為に、言い逃れられる可能性はあったけれど、言質を取るために質問を二つほどした。

「貴方はニコライ・カラマゾフじゃないよね?……だってこの部屋が貴方の部屋だっていうのなら、洗面台に電気シェーバーしか置いてないっておかしいよ」

 背後に立っていたクライスが「あっ」と言いニコライ氏の顔を覗き込んだ。彼は口ヒゲとアゴヒゲが繋がり、アゴはヤギのように長く垂らしていながら、綺麗に刈り込んでいる。艶のあるヤギヒゲには恐らく、ワックスか油を塗りこんでいるのだろう。
 ニコライ氏はバンザイをした手を降ろして、大人しくワタシの話を頷きながら聞いていた。

「それだけのヒゲの手入れに電気シェーバーだけで手入れできるものじゃないよね。昔、お父さんが格好付けて伸ばしたヒゲの手入れをしているのを見たことあるけど、鋏でカットして、シェービングして、ヒゲ剃りで剃り残しを取って……って具合に、いろんな道具を使っていたよ。……まあ、お父さんは面倒くさくなって無精ヒゲになってきたから寝てる間にワタシと妹でカットしたけど……」


*******************


「……いっぱい伸ばしたヒゲは電気シェーバーだけで綺麗にセット出来ないよね?」

 普段リリスはヒゲをカットしないものだから、最後は尻つぼみの疑問調で終わった。ボクもまだヒゲが生えていないから確信が持てないが、恐らく不可能だろう。それにどこかにきちんとヒゲ剃りセットなるものが収まっているような雰囲気ではなかった。この部屋の泊まり主はズボラだ。ジップの空いた鞄の中にそれらしきものはないし、洗面台にないのなら存在しない可能性が高い。出せと言われても、たぶんそんなものは出てこないだろう。
 老人は観念して溜息をついたようにボクには見えた。

「60点といったところでしょうか。最後はもう少し自信を持って言い切って欲しかった。……如何にも、ワタシはニコライ・カラマゾフではありません」

 偽ニコライ氏は観念したのではなかった。苦笑したのだろう。確かにどうとでも言い逃れの出来る論理の展開だ。……ただし、ボクはその穴があったとはいえ、疑問を持ったリリスを無条件に尊敬している。
 口元に魅力的な微笑を湛えて、老人は言い訳を始めた。

「クライスさんが、始めに私のことをニコライかとお聞きなすったから、どうにも悪戯心が芽生えましてね。全く気付く気配もないですし、このまま主人の元へ案内して対面するまでわからないのではないかとドギマギしたものです。……いやはや、なんとも偏見というのは怖いものです。クライスさんは私のデフォルメされた探偵姿を偏見の元で妄信し――通信機越しの声と全く違うものだったでしょうに――、お嬢さんはそれを偏見の元で疑った。ベクトルは違えど、私は偏見というのものが恐るるに値するものだとわかりました」
「あの、貴方は……」
「申し遅れました。私はヨセフ・ドローヴィチ。ニコライ・カラマーゾフの元で本来は執事ですが、こうしてたまに助手のような真似をしております。主人はこの下――殺人現場で皆さまをお待ちしておりますよ」

 ボクは遊ばれたことを憤慨すべきなのかどうかもわからず、飄々と悪戯を打ち明けるヨセフ氏の言葉に、ただ黙って頷くことしかできなかった。


***********************


……続く。

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