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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その10 情報屋とレティシア②

RGタイムズとヨネヤマの危機
その10
情報屋とレティシア ②



雷神家がシナリオ85日目までで終了しているので、ニコライ・カラマーゾフをメインにしてハデス襲来まで描こうかと思案中。
三日探偵 ~4日間の休日~
三日探偵 ~最後の選択~
ニュース的には106日目~ラストまでってところでしょうか。
ただ一旦この話を終わらせてから考察関連とかの記事に立ち返りたいと思います。

RGタイムズとヨネヤマの危機はその15までに終了予定。

***********************


「この部屋、暑苦しいったらないわねぇ。あんた金持ってるんだから、もっと換気に金かけなさいよ……あー、それにしても喉渇いた。アイスコーヒーが飲みたいから出して!」
 勝手にこの部屋唯一の椅子を引き寄せて座り、レティシアは幼児のように駄々をこねる。汗で湿り濃い色合いになっている髪が顔にまとわりつくのは気にしないクラリサだったが、来訪者の物言いには苛立ちを隠さなかった。
「文句をいうなら出て行ってください。今、仕事中なんですから」
 そもそもこの部屋には椅子と小さなデスク以外で家具というものが全くなく、人より機械の住処といったほうがよかった。たった一つのマグカップがクラリサの細い体の幅程度の小さなデスクの上に乗っていた。後は電源コードの傍に湯沸しポッドが一つ。部屋を見回した限りでは食料らしき食べ物はひとつもなかった。こんな部屋にアイスコーヒーといった気の利いた飲み物を求めるとこと自体が嫌がらせに等しかった。
「へえ、これが仕事ねえ……」
 レティシアはクラリサが地面においていたノート型端末を覗き込んで中身を興味なさげに読んでいた。ページを変える為にキーボードに触れると部屋の熱気で熱くなっていた。触れた瞬間に不機嫌になってレティシアはディスプレイに八つ当たりしそうになったが、クラリサの強い視線を感じて拳を下ろす。レティシアはあまり歓迎されていないことを把握して、胸元を手で仰いで白々しくごまかしたのだった。
「……それでも飲んで大人しくしてください」
 いつのまにかクラリサは湯気のたったマグカップを片手にもっていた。中身は茶色い液体――コーヒーである。さすがに冷やすための氷はなかったのだろう。たださすがに、この熱気溢れる部屋でホットコーヒーというのも嫌がらせの一環だった。
「いやいや、ありがとう。あー、”熱くて”おいしいわ」
 レティシアの皮肉を黙殺してクラリサは仕事の続きを始めた。そうすると、大人しくレティシアはディスプレイを眺めて黙っていた。意外に素直なレティシアに驚きつつ、クラリサは思考を完結づけようとしていた。もう検討はついている。彼女の情報ネットワークはおそらくGVW随一の精度を誇っている。あらゆる面で当てはまるものはそう多くはない。
「……アノフェレスか」
 ディスプレイを凝視していたレティシアの呟きにクラリサは自分の独白かと疑った。それは彼女が今しがた考えていたことだったからだ。
 アノフェレスというのは今、GVWを騒がせている犯罪組織の名前だった。無登録のニューロノイドを用いての犯罪を組織的にやっているということが明るみに出て、一度警察の一斉摘発が行われたが効果はあまりあがらなかったという。
「レティシアもその事件、アノフェレスが関わっていると思いますか?」
「犯人がこのパメラというニューロノイドだとしたらその可能性が高いわ。いっておくけど、これ以上はわからないよ。ほとんど予感みたいなものなんだから」
 ここまでくると勘というより予知夢の類なのではないかとクラリサは目を丸くして疑った。その疑問の眼差しを見てとって、レティシアは慌てて付け加えた。
「そもそもワタシは人間達が何しようが興味ないもの。ニューロノイド絡みの犯罪組織だから気にしていただけだし……あー、もう。いらいらする。暑いっ!」
 遠慮のない興味を示したクラリサを見て、レティシアは余計なことを言うんじゃなかったと後悔していた。――全く、この部屋の暑さが全ていけないのだ!
「そう、そうよ。アノフェレスの下位層絡みか、あるいは……裏切り者の粛清か」
「下位層絡み?」
「ええ、アノフェレスという組織はピラミッド型に組織員を配置しているから……頂点に立つものが自らをマスター登録したニューロノイドを制度の限界である3体を一体ずつ手下一人につけて、その手下も3体ずつ下位にニューロノイドを一人見張りにつけるんです。そうやって形成されたピラミッドは、ニューロノイドを組織員の監視役にすることによって鉄の規律を守らせるんです」
「なるほどね、裏切りを成せば監視役のニューロノイドを通じて一つ上層の組織員に知られて制裁を受ける。ニューロノイド自体はマスターの命令に服従するから、監視者に対して懐柔は不可能ってわけね」
「……たぶんこの事件もアノフェレスのことを調べていた記者に、内部情報をリークしようとして制裁を受けたのではないでしょうか。ついでに余計なことをかぎまわっている記者に罪を着せて社会から消し去ろうとした」
「ふ~ん、お役所関連にも組織員を忍ばせているわけね。一斉摘発の件も明らかになっていないけど、警察内部から情報がリークされてたってわけか。なかなか凝ったまねしてるじゃない。アルテミスの読みどおり、引き返せないところまでこの世界も腐っているわね」
 フェイオス体制による軍需企業の干渉。度重なるヒュームハンターの襲撃。食料事情。もはやGVW世界は人間が想像している以上に衰弱死の危険を多く内包していた。
 厳正な規律を要求される機関はそれだけに腐敗した役人を生み出さないように苦心している。そこに犯罪組織が入り込む隙はあるのだろうか?――実質上の支配者である軍需企業自体が大量の資本を武器に政府を骨抜きにしているのだから、答えは見えていた。つまり、ルールを作る側の人間が安易にルールを破っているという状況になっていた。
「理想の答えを知っていても個人の欲望に流される。このような組織が台頭してきたこと自体が人類を象徴しているのだとしたら……」
 賄賂という利益に慣れきって倫理観を犯された役人に付け入る隙がフェイオス協定後のGVW世界で虫食い穴のように広がっていた。クラリサはGVWの破滅的な末期に思いを馳せずに入られなかった。ヒュームハンターという脅威を前にしているというのに、彼らは気付かぬ間に自傷行為にはしっているのだから。
 たった一人の人間が殺された。それだけならばありふれた事件だった。ただしその犯人がニューロノイドだということが、ここまで現在のGVWを象徴するものだと気付いているものは少ないだろう。現に識者がこの話を聞けば大袈裟だと――ほんの少し、胸の中に黒い違和感を感じ取りながら笑ったかもしれない。
「でもパメラ自体の記憶メモリを手に入れれば、へっぽこ記者は大丈夫なんじゃないの?」
「そうですけれど、アノフェレスの構成員は何らかの手違いでパメラを現場に残してしまった。……もしかすると、パメラを取り返しに拘留されている施設を襲撃するかあるいは……」
「警察内部にいるアノフェレスの手のものが逃がす、ってところね……リリスのやつ、大丈夫かしらね」
 リリス、という単語を聞いてクラリサははっと顔をあげた。脊髄反射に近い反応でクラリサは食いついたのである。
「レティシア、姉さんが……どうしたっていいましたか?」
「そんな怖い目で見ないでよ。なんかヨネヤマ・マサオとかいう記者のところにリリスがクライスと居候してるから、真犯人を探すために探偵雇って探ってるらしいのよ」
「なんですって!それになんで貴方がそんなことを!!」
「だって、ワタシもそこに居候してるんだもん。いってなかったっけ?」
「聞いてません!……まさか姉さんと貴方が一緒に暮らしているなんて……、何を一体考えてるんですか」
 クラリサはふと、何で自分はそんなに怒っているのだろうと思った。
「何って……別にジャンに頼まれたからリリスをしごいてやってるだけよ」
 ――ああ、そうか。これは、嫉妬なのだ。依存といって差し支えないほどに敬愛しているニューロノドが、目の前の友と暮らしている。理性では家族が独り立ちするために離別したことを正しいと知りながら、感情があわ立つようにリリスの日向のような優しさを共有できる位置にいることに加え、自分には与えられないものを与えてあげられるレティシアが妬ましい。これでは哀れみを持って見たばかりの人類という生物と一緒だ。全くもって、この感情というシステムは度し難いとクラリサは歯噛みした。
「……いいです。そんなことよりレティシア、姉さんが危ないかもしれません。アノフェレスは潤沢な資金で重火器を所有している組織ですから、何かがあったら守ってくれませんか?」
 クラリサの願いをまるで汚物を見るようにして嫌悪感を顕にし、レティシアは一言吐きすてる。
「嫌よ」
 そのあまりな物言いにクラリサは戸惑った。
「……どう、して?」
「さっきいったばっかりじゃない。ワタシは人のやることになんか興味ないのよ。そもそも人類が滅びようたって構わないわ。それだけ新世界の扉が早く開くもの。……いい?ワタシをGVWに縛っているのはジャンの頼みだけってことを忘れないで」
 これがかつてアルテミスの手足として動いていたニューロノイドのまぎれもない本音だった。その言葉ひとつひとつに人に対する憎悪に満ちていた。
 ただ一人だけ愛していた人間が死んだことで、彼女に歯止めをかけていたものも失われていたのだ。
「でも、そうね」
 レティシアは何か一つ面白いものを思いついたのか、笑みを浮かべた。
 それがなんと陰惨な笑みなんだろうとクラリサは青ざめていた。呼吸が短くなり、動悸が早くなる。部屋の中は熱気に満ち溢れているというのに、冷や汗が止まらない。
「ティンクルの居場所を教えなさい。それで動いてあげるわ」
 有無をいわせず威圧するようにレティシアは言う。
 目の前の友から己よりも大事なものを奪ったものにたいする、復讐の炎が背後から燃え上がったかのようにクラリサは錯覚した。
「無理です……ティンクルはネットワークのある場所にいません。……たぶん、貴方に怯えて隠れているんです」
「そんなことわかってるわ。表に出てきたら即座に殺してやったもの。アイツには審判を受けさせる機会も与えてやらないんだから……あら、クラリサったら大丈夫なの? 蒼ざめているわよ」
 臆病者の小心をレティシアは嘲笑った。クラリサはそのとき初めて悟ったのだった――レティシアが臆病者に臆病者を探させようと、ここを尋ねてきたという事実を。
「別に貴方を怖がらせるつもりはなかったのよ、ただ友達に頼みに来ただけ、本当よ」
 クラリサが肉食獣の持つ獰猛さに怯えていることを感じ、レティシアは露骨すぎる剥き出しの獣性をそっと隠した。それも話を円滑に進めるための巧妙な擬態だった。そこでクラリサはレティシアが表面上余裕を装っているが、実は焦っているのだということに気づく。
 ――恐らくレティシアは譲歩のふりをして持ちかける。それも全て当初の予定通りにとクラリサは読み取っていた。
「いいわ、折角鍛えている弟子を失うのは本意じゃないもの。ただしティンクルに動きがあったらワタシにすぐ教えて、お願いよ」
 その読みは正確に当たっていた。懇願するような態度も、乗り気でないクラリサに言い訳を与えるための白々しい演技だった。現にレティシアの瞳の裏を覗けばたぎらんばかりのぎらぎらとした殺意と焦りが見て取れただろう。クラリサは全てを承知の上でレティシアに乗ったのである。
「わかりました。……姉さんのこと、よろしくおねがいしますね」
「んっ、任された」
 話はそれで終わった。レティシアは用は済んだとばかりに、生ぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。そして椅子にかけていた黒いジャケットを手に取り、部屋を出ようとする。
「ああ、そうそう。審判の日は近いわよ。貴方も気をつけなさい」
 去り際にレティシアが漏らした言葉の真意はどこにあったのか。クラリサは去っていくレティシアの背を不安げに見送っていた。

****************************

……つづく。

次回
RGタイムズとヨネヤマの危機
その9
逃走 ①

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