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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

そんな秋が来る日は……。 @2004 Alphapoint co., ltd. All Right Reserved.

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第4部 雷神家の絆 プロローグ「駆け抜ける閃光」

第4部 雷神家の絆 プロローグ「駆け抜ける閃光」

 そして、希望はやってこなかった。待ち望んだ時間だけ絶望と後悔が積み重なっていく。待ち望むだけでは、足りないのだ。
 祈ることを止めた男が取った手段は一つ。鉄と火による実力行使であった。彼にとってはそれが正しいかどうかではない。納得できるか、否か。罪に報いることが出来るか、否か。
 全てはGVW全土が炎に包まれる前日、ILBM機密指定区域にて始まる。

 

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 ――GVWタイムズ ○月××日 1面記事より。

 ILBM管轄軍事区域、ポイントL2Aにて昨夜未明爆発事故が発生……(中略)……黒い影のような巨大兵器(?)が闇夜の中に消え去ったという証言が……(中略)……ILBM広報は革命軍派テロリストによるテロ活動の一端と考えている、と公式発表したが黒の革命軍側はまだ声名を出していない……(中略)……。

 軍事評論家ユアロン氏「市民記者の携帯カメラ記録から見る限り、奪われたのはILBMの最新兵器なのではなかろうか。私の知りうる限りでこれらの影から推定される既存兵器は存在しないはずである」

 デスク評論:これら一連の騒動は今まで政治活動と証したテロ活動を宣伝してきた革命軍声名が出ていない以上、3企業暗闘によるスパイ活動が表に露見した形ではないかと思われる。


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 網膜を見開いて倒れこむ死人がひとつ。モノと成り果てたソレは語る言葉を知らない。

 ――人を殺したのは、これで何人目だ?
 
 少なくとも両手で数えきれない程度に殺したのは確実だった。廃棄街に始まり、エルベスリパート、議事堂街、辺境鎮圧、革命軍闘争、3企業暗闘。男の左繭から頬にかけて縦長く奔る傷は、無言の戦歴を他者に知らしめるのに足りうるものだった。
 耳朶をくすぐる銃弾が、緊張を背に載せて走り去っていく。冷たい地への口付けを余儀なくされた哀れな犠牲者は、そんなくだらない疑問符を浮かべる余地もなかっただろう。

「雷神。こいつだ。また、これはドデカイブツだな、おい」

 重々しい銃を掲げている男に声をかけた龍之介は口笛をひとつ鳴らし、だだっ広い倉庫に佇む鋼鉄の脚を眺めている。その声につられて男は目的の兵器に焦点を合わせた。
 長い胴体と百を超える多数の脚は、これが大暴れした悲劇の日において百足と呼ばれていた悪魔のHH。

 百足――プロトタイプセンティビート。

 この巨大トレーサーが倉庫には7機転がっている。あの悲劇をまた生み出そうと、出撃の日を待ち望むようにシルバーの胴体は鈍く光り輝いていた。

「これだけセンティビートを量産していたとはな。奴さん、本格的に戦争でも始めるつもりか?」

 男は思ったより面倒なことになりそうだなと、呆然と考えていた。だが先のことなど考えてはキリがないと頭を振り払う。


「まっ、俺は俺の仕事をやるだけさ」

 5年の月日を経て、破壊の悪魔、胎動せり。

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 第4部 雷神家の絆 プロローグ「駆け抜ける閃光」


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 会議場という名の箱は喧騒に満たされていた。
 ILBM86F特設機密会議室。ILBMにおける専務クラス以上の社員のみが集まり、会議をする為に用意された部屋である。内装は議会における調度品にも匹敵し、高級木材の椅子が醸し出す雰囲気は上品なものであった。
 しかしながら、その室内にのしかかるようなバリトンの重圧は腕組みをして唸る役員達で満たされていた。彼らは誰もが人目で判る質の良いスーツに身を包み、インナーのカッターシャツはクリーニング屋の丁寧な仕事ぶりがわかる、ノリの利いた仕上がり具合そのままである。
 支配者階級とも呼ぶべき彼らの間に、歴然としてひとつの見えぬ壁が存在していた。いや、二つに隔てられた3つの集団というべきか。
 その集団のひとつに属する、黒豹は議論をリードしようとしていた。――ルトバキア・サッズ。ILBM専務の一人であり、スキンヘッドによって、より明確に浮かび上がった精悍な顔つきが強く映えていた。

「もはや研究の終わったプロトタイプ、捨て置けばいいでしょう」

 その意見に反発するように一人の男が立ち上がった。

「いかん、ドミナス作戦におけるセンティビート1機の価値を知らんわけではあるまい」
「ですが、計画通りにいけばHHが来ます。それも明日にでも」

 サッズは脊髄反射で怒りを差し向ける視線を無視した。宥め、賺し、目的通りに事を運べばいい。

「1機のトレーサーでも無駄にはできませんよ。悲劇の日は近いのですから」

 唸る重役達。機数で劣り、対革命軍戦線に戦力を裂かれている現状で
 ILBMは現在、一つの計画に対し3つの立場によって隔たれている。
 ――反対派、慎重派、推進派。
 エルベンス・ストラクセン・アンダーソンを筆頭とした計画推進派。ILBM社長(正確には研究長なのだが、概ね社長と呼ばれている)フレイル・ザムン派閥の慎重派、そして少数の反対派。
 ただ慎重派と推進派の討論を眺めていたフレイル・ザムン社長は隣の席にいた男に耳打ちした後、ここでは始めての発言を、一太刀で推進派を斬って捨てる発言を会議に与える。

「給料泥棒のハウンドドッグを差し向けては如何かね」

 即座に耳打ちされた男が立ち上がる。白々しい予定調和の演技であった。

「ほう、それは名案ですな社長。どうせアイツらならHHが来ようと遊軍扱い。ここらで使ったところで問題はあるまい?」

 ルトバキア・サッズは舌打ちしそうな自分を自制して歯噛みするに留める。
 会議の流れは完全に推進派のものとなった。サッズの横に座っていたエルベンスも首を竦める。
 サッズもこの件はすでに脳内から追い出して、次の手を考え始めていた。

 雷神はこのようにして、ILBM内部協力者からも見捨てられた。彼にしては珍しく分の悪い戦いに身を置いていた。センティビートという一つの怪物を武器にした孤独な戦いは、始まろうとしている。

 

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「バウアー隊長。アーケロン、受領しました」
「本社までご苦労だったな」

 男は手首を前後に動かし、部下に退出を促す仕草で受領書に目をやった。最新鋭機とスペアパーツ諸々。それが意味するものは、この仕事の重大性であった。
 辺境の環境保護プログラム域外で、砂塵が吹き荒れる辺境があった。南部辺境地帯と呼ばれるランドウェイロック北部点にハウンドドック舞台の住処――ゲルのような広いテント――が存在している。彼らは罰ゲームのように最前線に留まり、辺境に随時顔を除かせるHHを叩いている珍しい常実戦部隊だった。

「この新型機は使えて5回、いや、3回が限界か」

 バウアー・ドラッケン少尉。ハウンドドッグの隊長を務める彼は、新型機を受領したからといって浮かれたりはしなかった。むしろ厄介なものを厄介な時期に押し付けられたと考えていた。
 ハウンドドッグのような独立系遊撃部隊は、部隊独自の整備技師を抱えている。彼らは当然のことながら複座型第1世代の機体整備しか経験したことがなかった。
 整備に要する時間、マニュアルを叩き込ませる時間。不安要素を抱えている以上、何度も出撃させることは不可能と考えざるをえなかった。

「とりあえず、奴を炙り出す段階においてブロッケンでなんとかするしかないな」
「隊長はどこに百足が潜伏していると考えていますか」
「……わかるわけないだろ、レドン君。現時点では材料が少なすぎるってもんだ」

 降参の仕草でシニカルな笑みを見せるバウアーには不思議な愛嬌があった。

「はぁ」

 部下のため息ともつかない返答に苦笑しつつ、バウアーは人差し指を立てる。

「いいか。雷神はあの図体の機体をずっと隠し続けていられない。ILBMの諜報部もバカじゃないから、本気で探せば1週間以内には見つかる。その前に奴は動く。つまり、我々は動いてから追えばいいってわけだ」
「しかし、動いたってタコ殴りに会うのは向こうもわかっているでしょう」
「もちろん。俺の勝手な予想ではGVWに混乱が生じる、その隙を縫って動き出す。そしてこのGVWは度々混乱に陥る、わかるな?」
「……ヒュームハンターの大規模襲撃」
「御名答。さて、そいつに備えていつでも機体を動かせるように整備させとけ。辺境狩りはとりあえず休業だ」
「ハッ!!」

 慌しく時が動き出す。
 バウアーは己と違い、正道を歩み続けた男を思う。その末路を想う。
 ――お互い、悲劇の日の生き残りはロクな道を歩まんな。引導は俺が渡してやるから待ってろ。ジャン・ターク。


******************************

 
 ILBMセンター街辺境はいつも寂れている。治安、立地条件の悪さに加え、だたっぴろい森林地帯であるが故に人口密度が低いのが原因だった。しかしこの日はハト一匹すら姿を確認することはできない。
 不気味さすら漂う森林の中に、センティビートは潜伏していた。

「この機体、ブロッケンを搭載してるのか?」

 龍之介と雷神はセンティビートの機体状況を確認する作業に移っていた。

「量産型は3機搭載出来る。こいつはプロトタイプだから改造の余地があまりなかったらしく、それ1機しか搭載できなかったらしい」
「ということは援護砲撃仕様のバトルシップって感じになってるわけか。運用戦術が確立されれば、とんでもない火力になるな」
「単独で闘うには装甲が薄すぎるから、トレーサーの援護は必要になる。UDFに近い防御性能の再現はまずムリってわけだ」

 雷神は煙草を探るが、切らしてしまったことに気付くと愕然とした。お尋ねモノになってしまった身としては不用意に歩き回るわけにはいかない。

「UDFは制限機能付。補給も、整備も得られない。話が違いすぎやしないか」
「予定通りにいくことなんて、そうないっしょ」
「いいか、弾薬ってのはな、とんでもなく高いんだ。ミサイル一発にしたって、ILBMの資金補助から外れると10倍の値段するんだぞ。やってられっか!……ったく」

 あたり一面に生い茂るヨモギの葉を、白い部分を上にし、口に加えて一言。

「節約、節約、倹約。それが俺の人生全てさ」

 達観しているようで、煙草の感覚を忘れられないのか、未練がましく口をもごもごさせている雷神。そんな男を尻目に、龍之介はカートン一箱積んであることを親切に教えてあげるような真似はけしてしないのであった。


******************************


 少女は佇んでいた。己の無力に、存在そのものに。
 ――雨だ。雨が、頬を伝い、顎先から首筋へと滴り落ちていく。
 雨だ。雨はこんなにも冷たくて、悲しいものだったなんて。
 それでも、この絶望を洗い流すことなんて、出来ない雨。


 雨が突如止んだ。否、それは彼女の錯覚であった。自分の周りにはまだ豪雨が降り注いでいる。
 気だるげに顔を上げると、大きな黒い傘が一つ。凛々しさと生気に満ち溢れた壮年の女性が彼女を見つめていた。

「雷神のエステルね。私と共に来なさい」

 ――この人は誰?
 当然の疑問を瞳で訴えるエステルに、女は言った。

「未来を語りましょう。ニューロノイドと私達の未来を」

 ウラ・イートハーは、最もエステルが求めている言葉を投げかけた。
 エステルはただ、その言葉の力強さに魅かれ立ち上がる。

 この人こそ、捜し求めていたものだという確信と共に一歩を踏み出した。


……to be continued

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NEXT 19話 高度11 「紅茶3杯分の未来」

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