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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

そんな秋が来る日は……。 @2004 Alphapoint co., ltd. All Right Reserved.

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雷神家の絆 19話 高度11「紅茶3杯分の未来」

雷神家の絆 19話 高度11「紅茶3杯分の未来」

 

 薄暗い闇の中をビームライトの強い明かりが切り裂くように突き進む。車のウィンドウは流れ落ちる水滴を弾きながら、鮮明な光景をワタシに見せ続けた。目まぐるしく移ろいゆく高層ビルの景色は変化に乏しいもので、ぼんやりと何も考えずに見つめるのに適している。
 まだ湿り気の残る髪は、そのものがどこか沈んでいるようにも見えた。女の手持ちのハンドタオルでは水滴を拭いきれなかった為だろう。温もりの残る運転手が着せたコートと車内を暖め始めたヒーターで身体は活動を促し始めている。
 ワタシは眼の端で己に未来を見せると言った女を見つめる。顔に浮かぶ皺は寄る年波には勝てないというより、まるで月日すらも支配に置く活気で彼女を際立たせている。そこには女と同席することにとって誇りが生まれるほどに、踊るように胸が高鳴った。
 女はマイク付ヘッドホンで長々と話し続けていた。多忙さの象徴であるかのような装備と、ワタシが借りている狐皮のコートからして、女の地位が高いところにあることは容易に想像できた。付け加えるならば、乗っている車も高級車の一つであり、揺れを感じさせない滑るような乗り心地だった。

「オイラー。結局のところ、神鋼はどういう結論を出したわけ」

 ワタシは推察した。時間は宝石より貴重な代物であり、自分とこうして車を走らせている時間ですら惜しいものと考えるような人種が隣にいるのではないかと。
 対話の相手の返答は、女に険しい顔を呼び起こすものだったらしい。

「二日後って、全くクラリネットのニューロノイドはせっかちでしょうがない。マスターに似たのかしら……あら、どうしたの?」

 女はワタシのほうをごく自然な微笑と共に振り向いた。ヤバイ、いつのまにか見惚れていたらしい。気恥ずかしさと共に、急いで首を真っ直ぐ戻して俯いた。
 女は首もとのスイッチを押してから、くすりと笑った。

「そういえば、まだ自己紹介してなかった。私はウラ・イートハー。現在は神鋼重工所属の軍人ってところで食客みたいなものなんだけど。貴方は?」

 ウラ・イートハー。ああ、この人がそうなんだ。7年前の悲劇の日における英雄的存在であり、正規軍における最終階級は大佐。悲劇の日における独断行動で軍事裁判にかけられて、懲戒免職になった。という辺りまでは――懲戒免職で済んだのも世論の後押しと、神鋼の情報操作によるものであることも――誰でも知っていることだ。

 ワタシはウラの問いにどのように答えればいいのか窮した。何も持っていない。肩書きも名前ですらも借り物という事実。ニューロノイドという存在、それが足枷になっている苦痛。

「ターク中尉……って今は雷神を名乗ってるんだっけ。彼は応急処置しか貴方にしてあげなかったのね。ったく、一番厄介な仕事を私に押し付けて、どこほっつき歩いてるのよ、あのバカは」
「ウラさんは、お父さんを知っているんですか?」
「元部下の顔はもうろくしても忘れないわよ。特に問題児は……あら、現部下からの催促が来たみたい、慌しくてごめんなさいね」

 すでに定められた報告を聞き流すように、ウラは頷いた。予想した通りのことを、予定通りに聞いたという程度であった。
 また首筋のスイッチ――通信機のオンオフだろう――を押してから、今度はエステルのほうを向かずに呟いた。

「エステル、貴方には紅茶3杯分の時間しかあげられないけれど、それを飲んだら立つべき場所を見つめて立ちなさい」

 ああ、そうか。お父さん、姉さん達といられた時間は傷が癒えるまでの休息だったんだ。

「立ち上がって、独りで歩いていきなさい」


************************************

 

 お父さん――ジャン・タークとは一体何者だったのだろうか。トライアングルウェイ、神鋼-ILBM間ホームで私は想う。私は悲劇の日機密レポートである386資料を紐解き、その一端に触れた。
 ジャン・タークの目的は、レティシア――母への復讐などではありえない。レティシアが言っていたような復讐や恨みなど、彼が抱いていないことなど一目瞭然であったからだ。
 ILBM入社はジャン・タークにとってレティシアへのアピールにすぎなかったのだろう。GVWという地下世界において、どこにいるかもわからない母へのメッセージ。それがランカーで居続けていた理由。
 あの人は優しかった。私がマイカ姉さんの優しさを愛していたように、マイカ姉さんはジャン・タークの優しさを依存といっていいほどに最も愛していた。
 その優しさは深く、だからこそ目的の為にマイカ姉さんを利用する道を捨てて一人で行ってしまった。お父さんは今回の最終目的の為に、マイカ姉さんを探したのに結局使わないという無駄は欲得を計算する狡さを含んでいるのに、愛情を感じるのだから不思議でならない。
 ――アナウンスが流れた。模範的な無機質な声が列車の到着を告げる。
 家族への憧れと、生まれてくるはずだった子供への贖罪。
 それが雷神家を築き上げたジャン・タークの理由だった。
 ――ホームへ向けてゆるりと速度を緩める列車。風圧が私の漆黒の髪を巻き上げていく。
 ジャン・タークは死地へ赴こうとしている。止めなくてはならない。マイカ姉さんには、まだお父さんがいなくてはならないのだ。いずれ独立せねばならぬとはいえ、今、無理に引き剥がせば壊れてしまう恐れがある――多分にこの時、私は父よりマイカ姉さんのほうを案じていた。
 停車した列車に脚をかけ、私は行きと同じ3等席に乗り込んだ。少ない荷物を片手に、多少込み入っている席の中で一つだけ空いている座席を見つけて私は座り込む。
 座席の手前には女性が座っていた。首元には十字の首飾り。化粧っ気のない肌は静謐なまでの慈悲に満ちている。その格好は神を信じ敬うシスターのものであった。
 その女性は穏やかな微笑を浮かべ、私に問いかけた。

「貴方が雷神家のヤヨイさんですか?」
「はい、そうですが。……失礼ながらどなたでしょうか」
「ウェルニー・ドライトンと申します。雷神から貴方のことを世話してやってくれって連絡があったので迎えにきました」

 ウェルニー・ドライトン。ドライトンの性を冠する女性は、軍務長官レッサー・ドライトンの次女であり、リオリー・ドライトンの姉でもある女性であることを私は資料で見て知っていた。
 お父さんは最後まで優しかった。目の前にその優しさが形として現れたように、迷える私にいつだって救いの手を与えてくれたのだ。
 涙ぐみそうな気持ちを堪えて、私は覚悟を決めた。例え長い生に終止符を打つ結果になろうとも、
震える身体を押さえつけて、危機に身を晒す覚悟を。

 瞼を閉じれば、深い色を携えた光景が眼に浮かぶ――私の中で、雷神家はまだ生き続けていた。

************************************


雷神家の絆 19話 高度11「紅茶3杯分の未来」


************************************


 ウラ・イートハーの部屋は至って簡素だった。都心部の夜景を見渡せるような高層ビル43階に位置するリビングルームは、その部屋だけで十分生活できるというくらいに広い。そんな部屋に家具――枕はひとつのダブルベッド、テーブルと椅子、洋服掛けしか置いていない。ただウラにとっては寝ることと、物置程度の必要性しかない場所なのだろう。

「どうぞ、適当なところにかけなさい」

 2脚しか置いていない椅子の下座に腰掛けるエステル。現在、エステルの身体を包むのはワイシャツと寝巻きに近い薄いパンツのみであった。元きていた洋服はウラ宅の乾燥機にかけられている。
 ――ああ、どうにも胸が高鳴ってしょうがない。
 ついてきたものの、何をどう話したらいいのかエステルには見当もつかなかった。

 そんなエステルに突如、ウラ・イートハーは声をかける。

「貴方、紅茶の好みとかはあるの?」
「いえ、特には」
「そう、じゃあ私の好みでいれさせてもらうわ」

 女性にしては大柄なウラ・イートハーは繊細な手つきでティーポットからカップへ茶を注ぐ。僅かな湯気から洩れる香りはほのかに甘く、柑橘類のものであった。

「さて」

 ウラ・イートハーがエステルの前にティーカップを置いて一言。

「貴方ががあんなところで泣いていた理由を教えてくれるかしら?」

 どう説明すれば伝わるか。エステルはエステルなりに整理を必要としていた。紅茶に口をつけると、香りから想像されたような果物の爽やかな香りが腔内に広がる。最後には対談者としてのウラ・イートハーの眼を見、重い口を、ゆっくり、ゆっくりと開いた。

「……始めは単純な憤りで、悔しくて。なんでそんな酷いことができるんだ!っていう。それでも同じ人だというのに、お父さんはワタシを愛してくれているってわかるし、近所に住んでいたオイゲン夫妻、いつもロボット犬を散歩させている変わり者のボルトンさん、ワタシがNNだってわかっていても優しくしてくれる皆。……対照的にワタシをNNと知るや蔑む数他の連中。わからない。人がいっぱいいるのに、優しい人もいっぱいいるのに、NNだってだけで傷つけられる理由が、傷つけても構わないっていう声が悔しくて。ただ痛くて、痛いことが嫌なのは人も一緒なのに。平気で傷つけることができる人もいるっていうのがごちゃまぜになって、人という生き物がわからなくなって、悲しくて……」

 エステルは安価な性欲処理機会として風俗店で使われている目の前で捨てられた女性型ニューロノイドを見てしまった。そのNNを捨てさせられていたユアン型NNと共に。その衝撃を思い出すだけでエステルはいまも身震いするほどの悪寒を感じていた。

「いつだって、私たち人類は矛盾だらけよ。歴史なんて矛盾だらけといっても過言ではない。文明が生まれた地球において、奴隷制度があったころの話だけど、奴隷なんていうのは今のNNと同じようなものね。人のようであり――事実、彼らは種としては人なのだけど――人の形をした家畜。人権なんていう思想が生まれた後も奴隷は所有物であり、人ではなかった」

 ウラ・イートハーは意識して、エステルに噛み砕いて説明していた。無論、この程度の歴史はNNならば生まれた時点で知識として知っていることはウラも理解している――但し、それは頭のなかにあらかじめインストールされているだけで、体系的に組織されて得た教養ではない以上、知っているとはいえても、理解しているということはできないとウラは考えていた。

「奴隷が人になるために、人として平等の立場を得るために歴史を辿るならば、NNを差別することに利点が見出せなくなる日まで耐え抜くか、黒の革命軍のようにテロリズムを持って戦うか」

 エステルは眉を潜める。前者を選べば、何もしないということである。現段階でこれを選んでも解決に至る可能性は非常に低い。後者はハナから不可能であった。なぜならNNは人に対して暴力を奮うことができない。

「そんなの、どちらも無理です」

 ウラが一口紅茶を飲み、尋ねる。

「そうね、無理だわ。それに奴隷と違って、貴方達は人の形をしていても生物学的には人とはほど遠いもの。NNがNNになるには、第3の道を、それも未開の道を切り開かなくてはならない」

 ウラは悪事を友に打ち明ける幼子のように、眼を爛々とさせて語りかける。そんな眼に対して、エステルは取り込まれるように惹きこまれていった。

「正直、答えは私にもわからないの。ただ、私にできることはNNの未来への道を探す手助けくらいのもの」
「先が見えなくても、私は私達だというだけの理由でも生きることのできる世界を探したいのです」

 ウラは少女の答えに満悦していた。――そうよ、その眼こそ、その好奇心と興味こそが私に必要なものなのよ。


 ウラとエステルの対談は続く。時間は限られたものでしかなく、ウラ・イートハーがあらかじめ述べたように紅茶3杯を飲む程度でしかなかった。その短い時間で夢想するに至った未来は、エステルにとって生涯忘れられないものとなる。

*****************************


 ウラ・イートハーが正規軍を脱退してから2年。多国籍軍時代の副官、オイラーの呼びかけが功を奏して、ウラは早々に軍事の舞台に戻っている。

 この英雄が雇われている神鋼重工の会長――サイナン翁と呼ばれている――はウラ・イートハーに最大限の好意を寄せており、よく食事の席での会話相手に誘っていた。それはこの女性が戦術、戦略、軍政のみならず、政治にも長けている教養者であり、人生を熟味した翁でさえ驚くような考えを度々披露してみせたことがあったからである。

 これはその席におけるウラ・イートハーとサイナン翁の会話のひとつである。

「人類がGVWへ避難してから1世紀、国内世論が内治政策に転換してから5年。もはや人類は地上回帰を忘れてしまっているのではないでしょうか」

 憂いを秘め、嘆息するウラ。多分に演技を含んだものであったが、彼女は私的な会話において過剰なまでの情感を籠めて話す癖があった。

「ふむ、志も義も失い、私欲に溺れ利権を漁る地下土竜に成り下がったという点では同意せざるをえんな。現状では後20年もして食料がつきかける状態が表面的に現れるまで世論は動かんじゃろう。して、地上回帰論が廃れたのも理由がないわけではない。そこをどう考えるかな、ウラ嬢は」

 翁からすれば、ウラ・イートハーといえども小娘同然であったが語感には侮蔑の色合いはなく、友愛の趣さえあったから、彼女にとってけして不快ではない。

「地上回帰は人類単独の力では成しえません」

 明快に断言するウラ。忙しいものが聞けば、それはもはや不可能であると極論しているかのようにも聞こえただろう。だが翁は急かすような真似はせず、沈黙で先を促す。

「ニューロノイドとの同盟……そう、服従を強いる関係ではなく、ニューロノイド自身による独立成長を促し、盟友として協力することこそが閉塞した現状を打破するための手段になるのではないかと考えています」
「ほう」

 サイナンは興味の色を称えて頷いた。

「従属において、ニューロノイドは人を超えることはできないでしょう。短命故に集団を成すために必要とされる哲学や思想が醸成される時間が足りていません。現在の人は研磨されていないダイアを身につけて満足しているようなものですから、ニューロノイドのポテンシャルを引き出されば、あるいは…」
「だが人類の多くはニューロノイドの独立を望むまい。あまりにニューロノイドは労働力としての経済に絡みすぎておるし、切り離せばGVWは大恐慌に陥るだろう」
「惨めな飢え死による全滅より、阿鼻叫喚の地獄のほうが救いはあります」
「過激じゃな、ウラ嬢は。興味深い案でもある」

 翁は三大企業体制という軍需資本主義の徒でありながら、憂国の徒でもあったから、ウラの意見に反対でありながら賛成でもあるという矛盾を抱えていた。その為に終始、興味を覚えながらもウラ発言に全面的賛同というわけにはいかないというのが言葉の端端に現れている。

「この考えも、ゲフィンイズムから紐解いたもので私の独創ではありません」
「マッド――マッドサイエンティストの略、GVWにおけるゲフィンに対する蔑称――にイズムと呼べるほどの統一した思想があると?」

 この間、彼らの目の前にあるワインの嵩はまったく減じていない。

「そうです、ゲフィンが人類を滅ぼそうと目論んだという者がいます。それは解答欄に書けば正解を貰えるでしょうが、途中式を要求されれば減点を免れ得ない答えでもあります。何故なら彼はアルテミスによる核で人類を滅ぼそうとしたのではなく、別の過程によって人類を――結果として滅ぼそうと計算している――と私は確信に近い予想を導き出しました」

 組んでいた指を人差し指だけ組み換え、ウラは語りを続ける。

「寄生による宿主の交代。人類にニューロノイドを寄生させ、ニューロノイドの餌とし、ニューロノイドを人類に代わる新人類として進化させる。結果として旧人類を絶滅させる……ゲフィンがHHを用いて人類とニューロノイドの交代を促そうともしているのでしょう。我々がこのゲフィンイズムから逃れるには、イズムを逆手に取った上でマッドの予測を上回る形でニューロノイドに進化を促させる必要があるのです。ありがたいことにゲフィンは、人に寄生させる為の機能として、無条件に人を愛するという感情――擬態を植え込んでおり、ここに活路はあります」

 


 ウラがニューロノイドに求めた独立は、象徴としてのニューロノイドを必要としていた。この段階でウラは頓挫しており、苦節していた。何故ならば、ニューロノイドの中には人類を嫌い、憎み、嘆くものはいても、ニューロノイドという存在から人類を切り離すという考えは本能の上で承服しがたいものであったからだ。
 ウラ・イートハーはグールと成り果てた夫の存在と同様、サイナン翁に語った考えを諦めかけていた。ジャン・タークがレティシアを諦めかけていたと同様に。

 だが、そんな彼女に対して運命はウラを楽しげに翻弄する。グランドールの出現はグールの帰還を意味し、雷神家の離散と連動し、一人のニューロノイドの保護を頼まれることになった。
 そのニューロノイドこそがウラの考えに興味を示し、影響されている奇跡。この少女を教育しうるのは私以外にありえないとさえ思っている。傲慢なまでの自信と確信が身体の芯から染み出るようだ。
 エステルはゲフィンの呪い――人への無条件の愛情――から解き放たれつつあり、人に反抗する危険性はあった。だが、ウラはその手の危険な綱渡りをせずに人類を永らえることはできないと考えていた。

 ――やはり、まだまだ引退できそうにないわね。

 苦笑しながらも、ウラは三杯目の紅茶を注いでいた。

 

*******************************

 

 エステルは三杯目の紅茶に手をつけている。
 ウラは席を立ち、しきりに携帯モジュールに向かい話し合っていた。
 ――来るべき時が来た――エステルは不安で張り裂けそうな空気を感じとり、カップを置く。空になったティーカップは小気味のよい音を広い室内に響かせた。
 行くべき道を漠然と見つけたのに、エステルは郷愁に似た気持ちを抱いていた。お父さん、マイカ姉さん、ヤヨイ姉さんに会いたい。聞いてほしい。私の気持ちを聞いてほしい。
 
 後に対立し、GVWを揺るがす戦いを繰り広げることになる三姉妹であったが、この段階ではどこまでも互いを恃みにして、不安定な一個の共同体であったことがわかる。
 ウラ・イートハーとの邂逅はエステルにとって、多分に運命的なものであったが、それが幸か不幸かはまだわからない。

 ウラ・イートハーが携帯での会話を終えると、開口一番。

「HHが集団で北部と南部に出現、私も一軍を率いて迎撃にでることになった」

 さらりと重大なことをいってのけるウラ。ウラ・イートハーが指揮を執るということは、英雄の現役復帰を意味する。それは平坦にいってのけるような単純なことではなく、聞けばGVW中が騒がしくなることであろう。
 そのように突っ込むものがいたとしても、彼女は平然と応えただろう。
 ――当然の流れにわざわざ騒ぎ立てていたら、息切れしてしまうでしょうに。とでも。

「はい」

 ウラの平坦な口調に対し、エステルも平坦に応えた。エステルにとってはこの人ほど戦場の絢爛さが似合う人はいないと思っているから、その場に赴くとしても違和感は感じない。

「なにぼさっとしているの。貴方もいくのよ」
「えっ、ワタシも?」
「決めたのならすぐ立ち上がりなさい。乾いた服を着て、人類とニューロノイドの未来を探しにね」
「……はいっ!」

 己の力で立ち上がったエステルに迷いはなかった。飛び上がるような胸中を抑えるのに一苦労し、動き出す。雷神が手を貸してくれなければ立ち上がれなかったあの日を越えて、幾月を経て、彼女は自らの力で持って立ち上がったのである。

 エステルにとって、生まれて初めての――そして最後の――長い休息は終わりを告げた。

 

……to be continued


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