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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その14 全てを捧げしものへ ①

RGタイムズとヨネヤマの危機
その14
「全てを捧げしものへ ①」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ヨセフに連絡を取って、車を持ってくるように言いつけておきました。……クライスさん達はどうしますか?」
 ニコライが決意を顕にしてからの行動は早かった。執事であるヨセフ・ドローヴィチに連絡を取り、携帯モジュールの通話をオフにするとクライス達のほうを振り向き、決断を促す。
 クライスは隣にいたリリスの顔を覗き見て、頷いた。リリスは依然として無言の圧力を周囲に与えている。一人で勝手に行かれるよりは手の届く場所に繋ぎとめておいたほうがいい。止めるだけ無駄だと理解していた。クライスはため息こそつかなかったものの、世の中思い通りにはいかないものだ、と苦い顔をした。
 ニコライも本来なら10代半ばの少年少女を、GVW隋一の危険な繁華街であるクーロン街に連れて行こうなどど尋ねもしなかったはずだ。それなのにあえて尋ねたのは純粋な好奇心とクライス・ベルンハーケンの存在を認めていたからだった。この少年は下手をすると、裏の世界に関しては自分よりも詳しいとニコライは知っている。廃棄街では表情一つ変えずに人の喉を掻っ切ることが出来るようなカニバリズムの持ち主しか生き残れないと噂されているほどだ。要するに蛇の道は蛇、ということでクライスに期待していたのである。
「ならば、今は時は金より貴重です。急ぎましょう。……ボブスン刑事はタクシーの行き先を報告する為に残っていてください」
 その言葉にボブスンはあからさまにほっとした顔をしていた。警察の威厳が通用しないような場所にあえて飛び込みたいとは思っていなかったからだ。ただそれを目敏く眺めていたニコライに気付き、ボブスンは至って謹直そうな顔を作って重々しく頷いた。
「……ごほん、わかった。降車地点を確認次第おまえの携帯モジュールに連絡をいれる……これでいいんだな?」
「ええ。宜しくお願いします」
 こうしてオーサカ署を出るとすぐに、ニコライとクライス、リリスの目の前に一台の車が横付けされた。メタリックブルーのボディーは煌びやかに夜の光を反射している。よく手入れされている車だな、とクライスは見て取った。車が静かに停止するとウィンドウが降り、操縦者の顔が見える。
「旦那様、お待たせしました」
 そこにはクライスとリリスが想像していた人物、ヨセフ・ドローヴィチと名乗っていた老人の姿はなかった。顔を覗かせているのは清潔感があり爽やかな顔立ちをした青年だ。肩まである蒼黒の髪は女性のようでもあったが、クライスは彼が男型であることを知っていた――何故なら、この顔はニューロノイド製品カタログに載っているものだからである。確かにその運転席にいる存在は一般的にフォーゲル型と呼ばれているニューロノイドだった。
 ヨセフと同じフォーマルスーツに身を包んだフォーゲル型ニューロノイドを確認すると、ニコライは助手席に座ろうとして、呆然と立っているクライスを見た。そこで疑問符を浮かべている依頼者に気付き、ニコライは手をぽんと打つ。
「ああ、説明していなかったでしょうか。これがヨセフ・ドローヴィチの本来の顔です」
「えっ……なんであんなおじいさんにばけていたの?」
 リリスの驚きにヨセフはしてやったりと口の端をあげていた。
「とりあえず乗ってください。車内で一通り説明しますから」
 リリスは符に落ちない様子だったが、そう言われれば本来の目的が最重要だと定めている以上、異論はなかった。先にリリスが後部座席に収まり、次いでクライスも乗り込む。
「では、いきます」
 アーケロンのホバー技術の一部を応用したとされている、ILBM傘下ネル・フロレンス社製の車は発進時も静かで振動を感じさせない滑らに動き出す。景色が流れ始めると、速度は一定となり数十秒で車は安定軌道に乗って、1時間程前にパメラが辿っていたであろう道をニコライ達はなぞりはじめていた。
「さっきの件ですけど、私から説明しますよ」
 始めの交差点の信号に捕まった時、ヨセフは後ろをちらりと仰ぎ見てそう言った。乗車権を譲渡してしまえば、基本的にこの車は操縦者を必要としていない。停車時、発進時のみは操縦を要求されるのが、ここまでくればヨセフが手を離していても目的地さえ定まっていれば勝手に動いてくれるだろう。
 ヨセフが座席の右についているレバーをあげると操縦席は180度回転し、クライス、リリスと対面する形になった。
「そんな複雑な話ではないのですけれど、依頼者の中にはニューロノイドを嫌っている方もいますので。いちおう初対面の依頼者には人間のふりをしているのです」
「それにしてはニコライさんのふりをしたり、楽しんでいるように見えたけど?」
 どうもリリスには腑に落ちなかったらしい。ここで何事か携帯端末をいじっていたニコライも助手席を反転させた。
「それについては私から再度謝らせて下さい。変装術に長けている故に、ヨセフはよく人に化けて……からかうという悪癖があるのです」
 ニコライは肩を竦めてヨセフをねめつける。しかし全くヨセフは応えていなかったようだ。
「いえ、可愛いお客様を見るとどうにもからかいたくなってしまうのは全く、悪癖としかいいようがないですよね。それが若い方ならなおさら、楽しんでしまう自分が恨めしい」
 白々しい言動とは裏腹に、心の中を覗けば舌を出していることだろう。要するに僕たちは侮られているのだな、とクライスは解釈した。しかしクライスはさほど不快に思っていなかった。早熟の天才技師として、若すぎることによってなめられるのには慣れていたこともあったし、ヨセフの言葉に憎めない茶目っ気を感じたからだろう。
 ――等間隔に並ぶライトの下を追跡者を乗せた車は騒音を立てずに走り抜ける。
 特に語ることもなく、ニコライがボブスンを経由して得た情報を基に進路をヨセフに告げ、それに応える音が時折するだけで、大半の時間において車内は静かだった。
 その静けさを始めに破ったのはリリスだった。
「ねえ、クライス……クライスは今回の事件の黒幕についてどう思ってる?」
 何故そんな質問をしたのか、沈黙に耐えかねたのか、当人にもわからなかっただろう。リリスはただ少年に同意を求めて怒りを共有したかったのかもしれない。けれどクライスはその期待に背いた。
「ヨネヤマさんに罪を被せたことについては、怒りを覚えるね」
 それはリリスが求めていた答えではなかった。何故わかってくれないのだろうと、もどかしげにリリスは言う。
「でもパメラのマスターを想う感情を利用して、人を殺させたんだ。酷いよ」
「僕はそうは思わない。ニューロノイドは人に献身することを求められて製造された道具だ。ナイフで人を殺すか、ニューロノイドで人を殺すかに替わりはない。そのこと自体に憤るのはナンセンスだよ」
 クライスの思わぬ反撃と普段の穏やかな態度と一変して冷酷な物言いに、リリスは一瞬たじろいだ。まさかそんな反論を受けるとは予想だにしていなかったのだ。クライスにはただ1日の疲れでぼやけていた隣にいる少女の空けるようなブラウンの瞳の奥で、即座に怒りの炎が燃え上がるのがわかった。
「……本当にそんな風に思っているの?」
 明らかにリリスの声には険が籠っていた。いつもならばリリスの怒りに動揺しておろおろするだけのクライスも、今回は動じず冷たい目でリリスを刺す。こうなればリリスには引くことはできなかった。それはかつて父と呼んでいた人間を異端だと証したことに対する憤りでもあった。
「何度でもいうよ。……人を殺すこと自体には怒りを覚えても、”どんな道具”で殺したかについて僕はなんの興味も抱かない」
「それがクライスの考えなんだね……わかったよ」
 リリスの怒りの奥底で深い悲しみの色が見え隠れしていた。当然ともいえるような感想にどこか――それは大半の人間が持ちうる一般的なものであると諦観を抱き、泣きそうな顔をゆがめ、リリスはクライスからそっぽを向いた。
 助手席からはニコライが深いため息をする音が聞こえた。それは自分の発言が世の中の真理であると信じて疑わないように言ったくせに、リリスが視線を外した途端に己の身体を突き刺したかのような苦悶の表情をしているクライスを盗み見ていたからだった。
「旦那様、ボブスン刑事から通信要請入っていますが」
 ヨセフは車内の重い空気にわざと気付かぬふりをして、常と変わらぬ爽やかな笑みを浮かべてニコライに告げる。暢気にその騒ぎを面白がっているような節のある執事に、ニコライは苦笑した。
「わかった。すぐに繋いでくれ」
「了解しました」
 車内中央に内蔵されている通信機器から、手のひらサイズのマイクを取ると数時間前に聞いたばかりの枯れた声が耳に響く。
「やっこさん、予想通りクーロンシティーで降車したようだ、正確な位置はメールを見てくれ。……それと、ちょっとおかしいことがあるんだが……」
 ボブスンは妙に歯切れの悪い物言いをしていた。先を促すようにニコライは沈黙している。車窓から見える景色はもはや繁華街のネオン色が濃くなっている。
「ちょうど、今おまえらが通った辺りで1時間近くパメラが乗った車が停車していたんだ。てっきり俺はそこで降りるのかと思ったんだが……その後、結局クーロンシティーまでいっちまった」
「1時間近くもですか?」
 パメラは無人タクシーが足がつく乗り物だと理解していたか、していないかは別として、相当急いで逃げようとしていたはずだ。この辺はすでに目的地まで車なら10分もかからない場所にある。わざわざこんなところで誰かと待ち合わせをしていたというのは考えにくかった。
(パメラ自身も思いも寄らぬアクシデントがあったというのか……?しかし結局クーロンシティーにまで辿りついている。内蔵カメラで降車したのもパメラ本人であることは確認されているはずだ……しかし推測するには材料が少なすぎるな)
 ニコライはこれ以上考えたところで答えは出ないと判断する。癖のある髪を人差し指でぽりぽりとかき、その問題に保留印をつけて記憶の底にしまった。
 隣ではヨセフがボブスンから転送されたメールを確認し、自動車のコンソールをいじって降車地点を指示をしている。背後の席にいる二人は明らかに聞き耳を立てている風だが、依然として喧嘩の真っ最中ですといわんばかりに無言のままだった。
 そうこうしているうちに、ニコライ達も眩いばかりの光彩を放つ夜の街、クーロンシティーにたどり着こうとしていた。


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