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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

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RGタイムズとヨネヤマの危機 その9 情報屋とレティシア①

RGタイムズとヨネヤマの危機
その9
情報屋とレティシア ①

***********************

(2)

 1ヶ月前のヒュームハンター襲来から、どうにも気象施設の調子がおかしいのか気温が低く肌寒い日が続いている。通りを行く人々も分厚いコートで体を覆い、寒そうに体を揺すっているのが目立った。昼を過ぎても白い吐息が口から漏れるほどに冷え込んでいたが、一人爪楊枝をくわえたレティシアは体の芯が熱を発しているのを感じていた。
「なにあれ、信じらんない。味は相変わらず最高だったけど、屋台だったのがちゃんとした店になってるとはね~探すのに苦労したわ。おばちゃんも皺が増えてたし……歳は取りたくないなぁ」
 目を細めて人の女性に恨みを買いそうな発言を白昼堂々とぼやきながら、レティシアは歩く。ジャケットを肩に担ぐ様はどこぞのオヤジのようでもある。だがその人をよく見ればそこらへんのモデルよりスタイルも良く、筋の通った鼻に桃色に潤む形のよい唇が絶妙にバランス良く配置されて美しい女だった――ただし、レティシアが黙っていて、評価するものが客観的に見ることが出来れば、という条件がつくが。
 お目当てのフォーを出す店で腹を満たし、満足したレティシアは相変わらず慌しく歩くオーサカシティーの人々を眺めながら――いつも何でそんなに急いでいるのかしら?――この街一番の通りを北へのぼっている。
 彼女はあるところを目指していた。ただし明確な目的があったわけではない。半ば野生の勘に似たものを頼りに、ある人物を探していたのである。無計画の権化であったレティシアにとって、アポイントメントを取ろうという発想はあまりない。はた迷惑なタイプであったが、本人はいきなり訪問して驚かせたほうが楽しいだろうと思っていたのでなおさら性質が悪かった。だが今回の相手は約束を取り付けようにも住所も連絡先もレティシアは知らなかったのも事実である。
 賑やかで華やかな店が並ぶ通りを真っ直ぐに15分ほど歩いたところの交差点で左に曲がる。喧騒を背後にして、狭く生ゴミの匂いがする路地裏に一歩脚を踏み入れた彼女はまるで異次元へ飛び込んだような印象を覚えた。まだ店舗を持っていない流れ者の商人達が住まうボロアパートが立ち並ぶ狭い通りは、レティシア一人が通るだけで隙間がなくなるほどに幅がない。それは向こう側からやってきた人と行き交う時など、前もって手ごろな隙間に体を入れてやりすごさなければならないほどだった。
 何事にも表裏というものがあるのなら、この通りはその一例なのかもしれない。表通りでは愛想良く客に応対し、声を張り上げて物を売る商人達の活気が溢れているというのに、この裏通りではそんな商人達が電力供給値の低い、暗い部屋のベッドの上で疲労の泥に塗れて死んだように眠っているのだ。
「アイツはこういうところが好きなのよね」
 彼女は目を細め、かくれんぼうの鬼役をしている子供のような顔をしていた。
 通りを中ほどまで来たところでレティシアはおもむろに目を瞑った。この悪臭漂うとおりで息を吸い込み、深呼吸する。彼女は感じていた。僅かな空気を、温度の違いを。故意に視界の感覚を閉ざすことによって、身体全体で鋭敏に流れを読み取ろうとする。通りすがりの商人のような男が通路を塞いでいるレティシアを迷惑そうに睨んだが、集中している彼女は気付かなかった。
「ちょっと姉さん、そこに突っ立ってちゃあ通れないんだがねぇ」
 苛立ち紛れの声だったが、相手が――黙っていれば美人の女であることから、男は多少怒りを抑えて肩に手をかけようとした時だった。
「ひいぃ!」
 見開くようにして目を開けるレティシアの形相に思わず男は悲鳴を漏らす。レティシアは目もくれずに一目散に駆け出す。
「こっちだ、絶対いる」
 我に返った男が怒声をあげているのが背中越しに聞こえたが、彼女は背景音の一環として聞き流して走る。狭い通りを勢いよく埃を巻き散らかして行く女に圧倒されて、数人の住民が道を譲った。
 レティシアは肌に周囲よりも生ぬるい空気を感じた場所で止まる。200メートルほどを全力疾走したというのに息も切らせずに立っている姿は異形のものだった。彼女の見据えた先には地下へと続く底知れぬ不気味な暗闇があった。口を三日月型に変えて、レティシアは己の勘に満足感を覚えながら階段を下っていく。階段はそう何十段もないのだが、薄暗い通りにある上に通路に明かりがないため、慣れていないものならば何も見えない道が実際よりも長く感じさせるだろう。用がないのに立ち寄りたいとは思わない場所に違いない。そんな階段をレティシアは鼻歌混じりに一段一段ゆっくりと降りていった。幾らか下ったところで右に折れると、木で出来た扉があった。そこの前に立つと明らかに周囲とは違う熱気がこの部屋にこもっているのがわかる。扉の上では換気扇が五月蝿いほどに勢いよく回っていた。
 レティシアは呼び鈴もインターホンもついていない、来訪者を拒むような空気を無視して2度ほど強くノックしてから返事を待たずにすぐ開けた。鍵もかかっていない扉は少し開けただけで想像以上の熱気が漏れてレティシアの全身を打つ。
 室内を見回すと、熱気から想像されるような活気は一つもない薄暗い部屋だった。ただ機械類とケーブルが散乱し、ファンの音だけがそこにある全てだった。大量の機械を動かしているために、部屋に熱気がこもっているのである。
「ねえ、誰かいないの?」
 ノイズに負けないように声を張り上げるレティシア。その声に空気が動いた。停滞して淀んでいた空気が動くのは生き物が動いた時だと彼女は知っている。この部屋の住人は僅かに身動ぎして侵入者の様子を伺っているのだろうか。必要以上に臆病だなと思うと、レティシアはつい鼻で笑ってしまった。――一発目で当たりかな。ついてるなー、ワタシって。
「レティシア?」
 部屋の隅にあるタワー型の機械の陰から声がした。信じられないものを見たときのような人間の声だった。
「そうよ。貴方と違って姿かたちが一切変わってないんだからわかるでしょ。世界の支配者たるクラリサさん?」
 その言葉を聴いて、息を殺して気配を消していたセルフカットしたような鴉色のおかっぱ頭が覗いていた。それはレティシアの唯一の友であるニューロノイドだった。


***********************

 
 二体のニューロノイドの繋がりは過去に同じマスターに仕えていたということだった。そのマスターはすでにこの世にいないが、大量の金と代理マスターを残して二人のニューロノイドに自由を与えていた。それは人の手に縛られないでいるニューロノイドがどう生きるかという実験だったのかもしれない。ただし、人に人間失格の烙印を押されていた彼女達のマスターはそんな小難しいことより、死後に金は持っていけないのだから思い切って自分のニューロノイドにも分け与えてしまえ!と考えただけなのかもしれない。もう少し穿った視点に立つのなら、ペットの犬に遺産を残す老婆のような心持だった可能性もあった。
 レティシアの欠点はがさつすぎるところだとクラリサは思っている。対してレティシアは目の前の冷静さを装っている友人のことを臆病だと嘲笑うことがしばしばあった。二人はお互いの良いところを全て知っているわけではなかったが、欠点は知り尽くしていた。それは弱点を包み隠さず見せ合える仲だということを証明している。本人達は親友というより悪友という関係だと堅く信じていたが、その境界線を論議することはここでは控えよう。
 そんな友がいきなり来訪してきたのは(レティシアに言わせれば、いきなり以外の訪問方法があるのかと憤慨していた。連絡先も何も伝えずに姿を消していたのだから非はクラリサにあったが、教えていてもサプライズと称した無礼な訪問に変わりは無かったであろうことは確信している)一つの仕事に取り掛かっていたときだった。

 2週間も眠らないである戦争に勝利し、3日間この蒸れた暑苦しい部屋で眠りについていたクラリサが目覚めたのは本日、午前5時頃だった。メンテナンスポッドにも入らずにいた期間が長いせいか、記憶の乱れを整理しながらまともな思考を取り戻すのに数時間かかってしまった。
 適当にお湯を沸かし、茶葉を入れるのもまどろっこしいと白湯のまま湯のみにいれていると、暗号秘匿通信が入ってきたのである。体が気だるいこともあってか無視しようかと思ったが、なんとなく躊躇われて――レティシアと違い数学の徒であるクラリサはこの言葉を嫌がるが、勘のようなものに誘われて手にとったのである。
 通信の主であるヨセフ・ドローヴィチという老人が持ってきた依頼内容はクラリサの知的好奇心を実にそそるものであった。
 ――ニューロノイドがマスターを殺せるか、否か。
 ニューロノイドはロボット三原則が適用されているが、その三原則は発祥当時のものとは形を変えている。
 とりあえず法律でありながらニューロノイドの生態を教えてくれる、紙に印刷すれば数千ページに及ぶ内容の関連法案を電脳データベースから検索して必要な事項を確保して、クラリサは腰を据えた。白湯を啜って脳内に羅列されている文字を追っていくと、そこにはこの世界と人間、ひいてはニューロノイドの関係性の歴史があった。
 膨大な情報量を持つ感情の再現と、記憶を整理するメモリの物理的寿命という縛りにマスターへの絶対的な服従。この二つがなければニューロノイドはホモサピエンスよりも明らかに優勢種である。このニューロノイドをコントロールするというのは重要な命題だった。
 嫉妬もすれば怒りもするニューロノイドだが、その感情は彼女達の爆発的な成長を支える原動力になっていた。ひとえにその感情は従来のチュリング回路式――人の脳波を読み取り、データベースの中から定められた反応を返すロボットによる擬態とは一線を画していた。
 ニューロノイドは不安定であるが感情という回路を再現することによって、1足す1が0にもなれば3にも4にも10にもなる、といったシンクロを生み出し更なる可能性を追求するというコンセプトの元に誕生したというのが一般的な見解だった。ただ生みの親である研究者とその元になった政府は地下歴前の存在だった為に想像するしかない。人々が地下に隠れた時、すでにプロトタイプニューロノイドは存在していたのだから。
 ――そのコンセプトを元にしている為、ニューロノイドは固体としては存在せず、常にマスターと対になるようにして存在を許されるように諸法律は制定されている。ニューロノイドは個人所有可能なのは3体までであり、それも始めは一体のみだったのが富裕層の非難により、多数所持者に対して税を重くかけることによって現在のような形に収まった。
 ニューロノイドはマスターの命令であれば人を殺すことが出来る。これは初期のロボット三原則――人に危害を加えてはならないという第一条に反するものだが問題にはならなかった。ニューロノイド関連法案の憲法ともいえる序文にて、ニューロノイドの犯した罪はマスターによって償われるものであるとされているからである。例えニューロノイドに殺人を代行させても、彼らの登記番号から割り出されたマスターが裁判に出頭し、罪を受けることになっている。更にニューロノイド代行犯罪は従来の罪より重く罰せられるようになっているし、総じて裁判官の心象が悪いので執行猶予がつくことも数少ない例外を除いてほとんどなかった。
 つまりここからいえるのは、マスター以外の人間を殺すことは不可能ではない。というリリスが出した答えと同一だった。ただし、それが本来のマスターにとって上記の理由からあまり得策ではないことも事実である。
 このヨネヤマ・マサオが不幸にも巻き込まれた事件の最も厄介な点は、確かに登記上はパメラのマスターであるヤサカ・ショウゴが殺されたという一点にあった。マスターは殺せない、これだけは揺るがない事実である。この点に関して強迫観念のように刷り込まれているのだから、ニューロノイドの生態に含まれるブラックボックスを解明しない限りは、当の人間達にとっても開放することはできなかった。
 クラリサは以上の法案から読み取った事実を元に考えた。仮にニコライの推理どおり、パメラが犯人であると仮定して逆算するのであれば、方法は一つしかない。
 登記上のマスターと実際にニューロノイドに登録されたマスターの食い違い。厳正であるはずのニューロノイド登記を司る労働機械局の中に不正を成した人物が紛れ込んでいる可能性だった。
 ――クラリサがこの考えに及んだ時にノックの音がし、扉が開いたのだった。


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