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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

そんな秋が来る日は……。 @2004 Alphapoint co., ltd. All Right Reserved.

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アガペ その3

RG SS アガペ その3 続きより。

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アガペ その1 その2

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 部屋の中央にあるちゃぶ台をひとつ挟んで、俺は少女と向かい合っていた。
 その少女こそが、神鋼重工が貧乏ガンナーに宛ててよこしたニューロノイドだった。エステルの時は丁重に説明してくれる神鋼の社員がセットだったというのに、今度はこいつ一人で来させたのか。立派な扱いだ。

「一緒に来てたけど、帰ってこないから…」

 ――こいつを置いて帰ったらしい。言葉足りないやつだ。
 全く、素人の俳優でさえここまで感情を込めずに棒読みで喋ったりはしないだろう。それほど無機質な声に苛立ちつつも、俺は新たなニューロノイドを再度値踏みするように観察した。
 ニューロノイドに共通して端正な顔立ちをしている。身体こそは小さいが品のあるお嬢様のような顔つきをしていた。ただし、中身から発する空気はヘタな人間より人間らしいニューロノイドがいる一方で、この少女の持つ者は明らかに無機質である。
 完成された感情システムを持つニューロノイドにしては珍しく、感情が希薄――それが俺が彼女に抱いた感想だった。
  彼女が抱えている妙なピンクの人形のほうが愛嬌があるのではなかろうか。ボタンで縫い付けられた目に頬に走る十字傷が特徴的な――たぶん猫のヌイグルミだろう。

「その人形はなんだ。新しい情報端末の一種か?」
「みるる……みるるは最強の肉食獣」

 まるで質問の答えになってない気はするが、とりあえず「みるる」という名前の人形らしい。
 まあ、いいさ。タダで貰ったモノにケチをつけるほど俺は落ちぶれていない。必要に応じて仕事をしてくれれば何の問題もない。
 半径30センチほどの小さな茶色いちゃぶ台には、このニューロノイドの仕様取り扱い書みたいなものが置かれていた。紙片を手に取り眺めると、さまざまな情報が小さな文字に詰め込まれている。
 ――商品名フィリア(F-2011)。細かい契約事項、以下省略。
 注意事項、このニューロノイドの寿命は従来のタイプより半分ほどになっております。この期間に貴方が再度自営困難――ガンナーは企業との契約形態を取りながら自営業と見做されている。ある一定の自由は保障されているが、保険関係の諸費用がかかるのが痛手か――となった場合、ガンナー資格証を3年停止とする。

「半分以下?……停止期間3年だと!?」

 思わず声を張り上げる俺。ガンナーという職業はなんだかんだいって体力勝負だ。40代のガンナーもいるが50代のガンナーはまずいない。生命の短いガンナーにとって、3年のロスは事実上のガンナー引退と同義である。
 要約すると2度目のチャンスは与えないぞ、ということになる。
 更に立ち直りの機会は与えるが、ゼロから半年以下の寿命しかないニューロノイドを使って立ち直れということだ。さすがに新人と同様のチャンスは貰えないらしい。商売道具であるトレーサーですらまともに動かせない有様から2ヶ月足らずで、次のシーズンを迎えることができるのだろうか?
 元ガンナーといっても、ウィーツーという不名誉な称号を持つ俺にガンナーとしての再就職機会などないだろう。そもそも俺は義務教育すら受けていない。ニューロノイドなどによる機械による生産ライン確立によって単純労働の働き口はあまりなく、GVWの失業率は20%を超えている。ニューロノイド差別者が絶えない理由のひとつだ。
 そんな細かい葛藤に苛まれている最中、少女――フィリアはじっと俺を見ているのか見ていないのかわからないような、焦点の不確かな眼差しでこちらを向いていた。

「……暇」


   ◆◆◆◆◆


 とりあえず俺はウィリー不良債権再生機構を自分の中で立ち上げた。
 ガンナーである以上は商売道具をなんとか元に戻さなければならない。大まかにわけて頭部、腕部、脚部のパーツ、そして武器、弾薬。これを買えるだけの資金を手にしなければどうしようもなかった。
 トレーサーという最新の精密兵器は値が張る。腕一本にしたって安物でも1万FGは軽くかかるのだ。危険地域の建設工兵仕事を1日10時間したって1000FG程度しか稼げない。休みなしで働いても腕一本取り戻すのに単純計算で10日かかることになる――無論、この計算には生活費諸々が入っていないのだからもっとかかるだろう。それに人は休み無しで何十日も働けない。
 俺一人で働いたとしても、試算して2ヶ月働きづめにして漸く全てのパーツが買えるかどうかといったところか。武器や弾薬も勝つ為にはケチれない。1シーズンの四分の三はただ日雇いバイトをするだけで経過してしまう。
 それもこのニューロノイドに働かせれば期間は単純に半分にすることができる。俺の修羅が復活した頃にはフィリアの寿命は数週間もないだろうが、構うものか。

「よし、フィリア。お前には早速、ニューロノイド喫茶で働いてもらうことにしようか」
「……ニューロノイド喫茶?」
「読んで字の如く、ニューロノイドが給仕している喫茶店だ」
「わかった、やってみる」

 どうにもわかったような顔には見えないが、命令にたいしてのイエス程度の意味だろう。さほど疑問に思わず、俺は電話をかけてフィリアを登録したのだった。
 さて、明日からは本腰を入れて稼ぎにいくか!と気合をいれなおしたのも束の間。


 ――フィリアはバイト三日目であっさりとクビになった。


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