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RGタイムズ紙 / スポーツの秋?食欲の秋?読書の秋?……それともRGの秋?

そんな秋が来る日は……。 @2004 Alphapoint co., ltd. All Right Reserved.

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アガペ その9

これでラストです。
ほんまつかれたわー。ということで続きより。

 ◆◆◆◆◆


「今日は出張屋台の日や。一杯くうてかへんか?」
「そんなのやってるなんて初耳だぞ」

 あっけらかんとマーは言ってのけた。俺は疑惑の眼差しをマーに向けて訝しがっている。
 そんな妙な空気の最中、フィリアは安っぽいパイプ椅子を軋ませることなくすとんと座った。

「いつもの」

 この1ヵ月半、いつも昼飯をこの屋台で食べていた。フィリアは何もおかしいことなどないと言わんばかりに自然体でいるようだ。

「ここはツッコミどころじゃないのか?……それにいつものなんて初めて聞いたっつうの」
「……一度いってみたかった」
「はいはい、ウィリーも座った座った。マースペシャル2杯入るよ~」
「ったく、わかったよ」

 手馴れた仕草で水を切り、マーはスープの中にヌードルを入れる。フィリアが渡した割り箸を受け取りいつもの匂いを嗅いでいると、本当にここが俺の戦場の傍なのだろうかと疑いたくなる。いつもの汗を流した後の喉かな昼休みの中をまだ彷徨っているのでないだろうか。

「はい、おまち~」

 トンとフォーを2杯、俺たちの目の前に置くマー。マー・スペシャルはいつもの3倍は鶏肉が多い。そんな彼女が作ってくれたフォーを見ると緊張で食欲を失っていたのが嘘のように口内から唾液が滲み出る。すでにフィリアはこの大物のスペシャルに取り掛かっている。俺も出遅れるものかと割り箸を割って麺を啜った。
 アツアツのスープに舌が喜び、もやしのシャリシャリとした歯ごたえが心地よい。こんな美味いものがこの世にあったのか。
 俺はただ夢中になってフォーを貪っていた。フィリアも同様に、無言ではふはふ言わせながら食べている。マーはそんな客二人をじっと見詰めていた。
 俺が最後のスープを身体に流し込んだ時、全身が暖かくほぐれていた。

「マー」

 俺は空っぽのお椀をじっと見て、彼女の名前をぽつりと呼んだ。

「ん?」
「ごっそさん……ありがとな」

 いきなりの不意打ちに、マーはたじろいでいた。

「はぁ?い、いきなり素直になるなんて、きしょいなぁ……ま、スペシャルくうてんから、あんじょうきばってウィーツーの称号を返上してき」

 俺とフィリアは立ち上がって、マー・リンレイに親指を立てて応える。
 そして同時に「うすッ」といって20FGを置いたのだった。


   ◆◆◆◆◆


「どうせ緊張してるおもて、日昇る前にここまで屋台引っ張ってきた甲斐はあったようやな」

 マーが立ち去った二人のお椀を洗っていると、歳の割りにしゃっきりとしている老人が物珍しそうに椅子に座った。

「ほう、こんなところで屋台とは珍しいのぅ。なんかイベントでもあるのかい」

 よくよく観察すると、身なりのよい服装だ。少なくとも老後を迎えたガンナーバトル好きの爺さんが暇つぶしに来たという感じではない。
 ――トレーサー開発企業関係のえらいさんなんかなぁ?

「知り合いのガンナーの為に本日限定、マー・リンレイの屋台出張サービスやってます」
「ほほぅ。彼氏の応援かのぅ?」
「ち、ちがいます!」
「ほっほっほっ、まあ適当に見繕ってくれるかな」

 マーは初心な娘のように茹でた蛸のように顔を真っ赤に火照らせて、フォーを作るのだった。

 

********************************


 スタジアムの東側、通称「挑戦者の道のり」に俺の組み上げた修羅は置かれていた。若干脚部が丸いのはスペクターのパーツを応用したからだ。胴体バラバラの人形をちぐはぐに縫い付けたような印象の機体だった。これが動くと聞けば、トレーサーとは本当に精密機械なのだろうかと疑いたくなる。
 主武装はスプリガン。10年以上前に発売され、今なおガンナーに愛されているベストセラーライフルだ。破壊力は劣るが精度、使いやすさはピカイチといっていいだろう。同じ古いモデルなら92式対物銃程度の武装が欲しいところだが贅沢はいえない。そしてもうひとつの武装はシングルレーザーナイフだった。主流のレーザーナイフはナックルに2本のナイフを取り付けたものだが、シングルナイフは文字通り片刃のレーザーナイフを握って使うものだ。
 この武装にマガジンが一本。つまり、リロードは1回しかできない。火力の低さは承知していたが、実際に見ると心細くなってくる。
 今までの俺であればここでヤル気を無くしていただろう。それでも隣のフィリアとみるる。そして体内に残るスープの温もりが、俺を奮い立たせてくれた。
 いちおう下位ガンナーとはいえども試合前には神鋼の整備士が最終チェックをしてくれる。本来ならニューロノイドと作戦を練ったりする。しかし俺とフィリアは作戦を立てても実行できるほどの操縦技術を残念ながら持ち合わせていない。手持ち無沙汰の状態で整備を見ていることしかできなかった。

「フィリア。勝てると思うか?」

 超然としている彼女に向けて、俺は暇つぶしに尋ねてみた。フィリアは一度、ちらりと横にいる俺に視線を向け「わからない」と言って、整備されているトレーサーのほうに顔を戻す。

「……でも、勝ちたいとはおもう」

 へえ。こいつってこんなに主張の強い奴だったのか。なんとなく関心してしまう。

「ハングリーなのはいいことだ。もしかしたら俺よりフィリアのほうがガンナーに向いてるのかもな」
「…………ん」

 試合前のちょっとしたやりとりに俺はなんとなく思う。
 ここで勝てても下位リーグの勝利賞金は雀の涙。とてもではないが次の試合は組めない。すでにブラックリスト入りの俺はフィリアの再生資金を借りることもできないだろう。
 ――そうか、これがこいつと組んで戦う、最初で最後の戦いになるんだな。


   ◆◆◆◆◆


 久方ぶりのトレーサーの感覚は重かった。センサーアイを左右に振ると、がらがらの客席が荒く映し出される。
 西側から出てきたオルドビス――あの仕様は……開幕戦で蛇骨と戦っていたやつだ――は白銀で細身のボディーだというのに、まるで威圧するようにゆるりと俺の修羅と対峙していた。

「今シーズンの成績は0勝15敗。負けは全て不戦敗の挑戦者がついに暴れる。ウィリアム・F・グローバー!!」

 対戦者を紹介するアナウンスが流れた。こいつが流れるということは後30秒もしないうちに戦いは始まるということだ。
 やはり聞いたことのない――今期初参戦なのだろう――のオルドビスのガンナーの紹介が終わると、トレーサーは敵に背を向ける。
 まるで果し合いをするガンマンのように、レディー・ゴーの合図と共に振り向いて戦うというのがガンナーバトルのルールだった。
 四方を覆う壁と壁の距離は実に2キロに及ぶ。背を向けて立っている修羅とオルドビスの距離はその半分。広々とした空間が、一度ゴングが鳴ればトレーサー同志の激しい白兵戦で狭苦しく感じられるのだから面白い。
 ああ畜生。やっぱり俺はガンナーバトルが好きなんだな。乾いた喉に一滴の水を落とした時のように、俺はこの感覚を喜んでいる。
 そのことに気付くのが遅すぎた。――けれど……今だけは、この瞬間を楽しもう。
 覚悟を決めた時、鐘は鳴った。


********************************


「へぇ、アイツちょっとはマシな動きになったんじゃないの」

 豹柄の目立つコートにサングラスをかけた、見るからに目立つ格好の女が試合を観戦している。それは開幕戦でウィリーと会話していたガンナー、雷神だった。

「どうなっとる?」

 その横に先ほどマーの店でフォーを啜っていた老人が声をかける。雷神は珍しいものを見たかのように老人を見上げた。

「あら会長。こんなとこで会うなんて珍しいんじゃない?」
「今日は例の正規軍所属ガンナーが出場していると聞いてな。たまには観戦してみようと思ったんじゃが……なんじゃあの修羅は。うちの機体なのか?誰が乗っ取るんじゃ」

 老人はウィリーが改造した修羅を見て目を丸くしていた。その仕草がおかしかったのか、雷神はぷっと笑った。

「正真正銘うちのガンナーよ。ウィーツーって聞いたことあるでしょ」
「ああ……ウィーケストウィリー。最近見なかったはずじゃが、復帰しておったのか」
「そ、今日が復帰初戦。あの機体、ウィリーの奴がジャンクから全部自作したらしいわよ」
「全部自作じゃと!?」
「笑っちゃうでしょ。ニューロノイドと組み上げたんですって」

 片眉をあげて、老人は腕を組んで腰を据えた。懐からオペラグラスを取り出して、格闘戦へ移行しつつある2機を双眼に収める。

「……ほほう。この試合、別の意味で興味深くなってきたのぅ」

 雷神も煙草を取り出し、すらりと長い引き締まった脚を組む。ライターを付けて口に咥えた煙草に火をつける。

「吸う?」
「結構。医者に止められておるのでな」
「そ。……私はウィリーを見に来たんだけど、この試合は本当に興味深いわね」

 雷神がふぅと息を吐くと、白い煙が浮き上がる。

「あの正規軍代表とかいうガンナー――ウラ・イートハーっていうんだっけ。近いうちにファーストリーグにくるんじゃない?」


********************************


 替えのマガジンを一杯に撃ちつくしてなお、オルドビスは平然としていた。
 ――アイツ、かなり上手いな。
 畜生。今期初参戦とはいえ、あんなやつが下位リーグをうろついてるんじゃねえよ!
 避けれないと判断した時の反射避けの感覚が絶妙すぎる。機体の角度を微妙にずらして複合装甲の上を弾が滑るようにして、直撃を避けていやがる。
 対してこちらの修羅は向こうのグレネード弾を何発か食らって黒煙をあげていた。所詮はジャンクを組み合わせたトレーサー。装甲強度は期待できない。
 それに2週間訓練しただけのニューロノイドと、2ヶ月訓練していない最弱のガンナーの組み合わせなだけあり、動きも実に不味いもんだ。1分持っただけでも奇跡かもしれない。

「フィリア、白兵戦用意だ」
「……了解、マスター。レーザーナイフ装備します」

 フィリアの声はどことなく疲労の色が見え隠れしていた。そりゃそうだ。戦闘用のトレーサー操縦っていうのは、素人には想像できないほどに疲れる。加えてグレネード弾の衝撃で揺さぶられるコクピットってやつはボディーブロウのように操縦者の体力を奪っていく。衝撃吸収機構が発達していなかった過去のトレーサーにおいてはトレーサー自身が破壊されるよりも、ガンナーが先にノックアウトしてしまうことがほとんどだったという。
 シングルのレーザーナイフを左逆手で持った修羅はライフルを投げ捨てる。そして残った手で挑発する。
 ――乗って来い!
 俺は全般的に操縦がヘタクソだが、特にガンナー間で「寄せる」と言われる技術がなっていなかった。「寄せる」とは威嚇射撃のみで敵との距離を縮めて白兵戦に持ち込む技のことを指す。
 そんな事情から出来れば寄せること抜きで格闘戦に持ち込みたかったのである。
 願いが通じたのか、蛇骨と戦っていた時のようにオルドビスはグレネードランチャーを投げ捨てて双刃型のレーザーナイフを抜いた。
 けして喜んでいい場面ではない。挑発に乗ったということは、それだけ格闘戦に自信があるということだ。現に蛇骨との戦いにおいても格闘戦で冷静に弱点を突くことのできる技術を持っていることは証明済みだ。

「いくぞっ!」

 かといって恐れているわけにもいかない。俺は自分を叱咤するように声をあげ、修羅を突進させた。直線距離にして四百メートルばかりあっても、地を蹴れば時速120まで1とコンマ7秒で加速することの出来るトレーサーにとっては手の届く間合いといっていいだろう。
 挨拶代わりにすれ違いざま、ナイフを順手に持ち替えて突き刺すようにオルドビスの頭部を狙う。
目視不可の瞬速機動においても、オルドビスのほうが一枚上手だった。敵は右手のレーザーナイフを使わずに、ブレーキをかけて滑るように脚払いをかけたのである。
 オルドビスを加速して突き刺そうとしていた修羅は見事に転んだ。宙を1回転して平衡感覚を失ったと思ったら、地面に叩きつけられていた。あまりの衝撃に内臓は揺れ、胃液が逆流する。
 消化中の鶏肉やヌードルが吐き出され、口内は特有のすっぱい酸性でぴりぴりとした。

「あーー、くっせえ。久々にきついのやってくれるぜ……おい、フィリア。気持ち悪いなら吐いちまえよ」
「………んん」

 声にならない声で返答する青ざめた顔のフィリア。そういえばこういうときの対処方法を教えていなかったんだ。緊張はほぐれたが、試合慣れしていないフィリアに飯を食わせたのは失敗だったかもしれない。ここで奇麗にゲロを吐けないと、揺れる2脚機体では酔ってしまってまともに操縦できなくなってしまう。
 10秒くらいは転倒の衝撃に悶絶していたが、オルドビスは追い討ちをかけようとしなかった。ただし、油断はしていない証拠に一歩一歩確実に距離を縮めてきている。全くもって隙のない戦い方をしてくれる。
 機体を起こさず、ゲロ塗れの臭いコクピットの中で寝転がったまま俺は考えていた。
 これ以上時間をかけると、機体より中のほうがまいってしまう。次の組み合いでケリをつけたい。――ならば!
 動かない修羅を見下げ――ここでこの試合唯一といっていい緩慢な動きで、オルドビスは右の拳を振り上げ、とどめといわんばかりにレーザーナイフを右胸に突きたてようとした。

「フィリア、お返ししてやろうぜ。緊急起き上がり、頼んだ」
「うす、マスター」

 フィリアが慣れているとはいいがたい、ぎこちない仕草で指を動かす。すると、トレーサーは人ではありえないトレーサー特有の瞬発力を用いた背筋の動きで起き上がった。その動作の最中に修羅は右手を伸ばし、近づいていたオルドビスの左足を持ち上げる。オルドビスはこの連続した動きを予想していなかったようで、あっさりと捕まってくれた。

「上出来だ」

 そのまま反動を使って修羅はオルドビスを放り投げた。オルドビスは受身を取ろうと空中でもがき、放物線を描きながら地へと落下していく。そのオルドビスを追って、修羅は疲れきったランナーのように両腕を泳がせて走り出す。

「いっけええええええええええ!!」

 この一撃で決めてやる!!
 突進しながらナイフを振りかざす修羅。俺は操縦レバーをぐっと前に押し出し、それに連動するように修羅はオルドビスにナイフを突きたてようとする。
 オルドビスは奇麗に受身を取り、遅れて修羅に拳を繰り出した。
 ――遅れて?……違う!
 このタイミングは、絶妙の感覚において成せる必殺のカウンター。
 そう気付いたときは遅かった。止まろうにも間に合わない。
 刹那、修羅とオルドビスは激突していた。


********************************


「面白い勝負じゃったのぅ……おや、もう帰るのか」
「そろそろ調整しにいってやらないとクラリサがうるさいからね。それに、あのカウンターを見れただけでおなかいっぱいよ」
「ふむ……ワシもスカウトしにいかんといかんしな」
「会長はそっちのほうに刺激を受けたか。初めの目的とお互い逆になったわね」
「カッカッカッ、全くじゃ」

 勝者、ウラ・イートハーの放送が流れる。下位リーグにしては見ごたえのある勝負に観客が沸いている中、二人の観戦者はスタジアムを後にしたのだった。


********************************


 バトルフィールドへ続く道の途中にある天井が低い通路。その通路にあるベンチのひとつに一人の女が腰掛けている。

「……終わった」

 ベンチに座っている女に膝枕しているフィリアは、平時と変わらぬ声量でそう言った。

「終わっちまったな」

 一緒に低い天井を見つめていたウィリアム・F・グローバーも同様に、フィリアと少しばかり頭をぶつけて膝枕に便乗している。

「ふたりとも、おつかれさん」

 戦いを終えた二人を膝枕しているマー・リンレイは、常のように愛嬌のある八重歯を除かせて、二人の頭をぽんと叩いた。
 

********************************
********************************

 

 ――神鋼重工整備部門専務。ウィリアム・F・グローバー。
 それが過去にウィーツーと呼ばれたガンナーの、現在の肩書きだ。
 俺、ヨネヤマは過去にこの人の記事を書くように依頼されて話を聞きにいったことがあった。この話はそれを基に興したものだ。

 最弱と呼ばれた彼はこの戦いの後にガンナーを引退する。
 この時、自力で修羅を組み上げた技量がたまたま試合を見に来ていた神鋼重工会長の目に留まり、トレーサー整備部門にスカウトされる。
「何も考えずに適当に組み上げたトレーサーがよく動いたものだ。あんなトレーサーに乗って戦っていたなんて、今になって思えばぞっとするよ」とはウィリアム氏本人の弁である。
 ウィリアム氏はスカウトに対して、ニューロノイドの転生費用1回分を前借することで応じ、そのまま整備担当として神鋼に入社した。
 そこからのサクセスストーリーは業界内では有名である。
 特に彼の名声をあげたのが、悲劇の日と呼ばれるヒュームハンター大規模襲来に際し、多国籍部隊所属トレーサー中隊のトレーサー全てを僅か三日で整備してのけたのは伝説の域である。
 下っ端からたたき上げで、神鋼重工の千機に及ぶトレーサー部隊を整備する部門の専務にまで上り詰めたのだ。
 俺は彼に尋ねた。この成功の転機はどこにあったのかと。

「そうだな。こんなことをいうと女房に怒られるかもしれないけど、やはりフィリアとの出会いが俺の人生を変えたんだろうな」


   ◆◆◆◆◆


「あら、ヨネヤマさんやないの。ひさしぶりやなぁ。……うちの旦那やったら帰ってくるのおそなるから後ろでまっとき。昼飯もまだなんやろ?」

 フォーのお店を切り盛りするおかみさんは八重歯を除かせて、捲くし立てるように俺に話しかける。
 そう、彼女はグローバー夫人ことマー・リンレイである。結婚してからも、借金抱えている旦那の為に屋台を続け、返済した後も続けていたら、ついには店までたててしまったのだ。
 俺がこの話を書く許可を得にウィリアム氏を訪ねたときも、客の入りは上々で繁盛しているようだ。
 いちおう広報記事を書いたときに取材していた経緯で俺とは顔見知りだ。

「じゃあお言葉に甘えて失礼します」
「よっちゃん、後ろにスペシャル一杯もってったってー」

 よっちゃんと呼ばれたバイトの少女は「はーい」という元気のよい返事が店内に響く。活気があっていい店だと俺は思う。
 店の裏はグローバー一家の住まいだ。俺は裏手に回って、ドアを開ける。玄関では靴を脱ぐという奇妙な習慣に従い、俺は彼らの住まいに一歩踏み入れた。
 まず目についたのが、生まれて2歳くらいの幼児がへたれたピンク色の人形を引っ張って遊んでいる光景だった。――あの妙な人形がこめかみに青筋浮かべているように見えるのは、俺の気のせいだよな?
 次にカランカランと音がするのが聞こえた。
 音のするほうへ顔を向けると、赤子用のベッドに乗り出してガラガラを振っている少女が目に映る。
 金色の髪に、朱色の瞳の少女が生まれて間もない赤子に穏やかな微笑を浮かべていた。

「お邪魔します」

 いちおう一声かけると、フィリア型ニューロノイドは先ほどの微笑が嘘だったかのように無表情で「うす」と奇妙な挨拶をした。
 フィリア型があんな表情するなんてなぁと関心して、俺はヨッチャンが持ってきた鶏肉いっぱいのフォーを啜ったのだった。


アガペ (完)

***********************************

(あとがき)
強いガンナーがいれば、最弱のガンナーもいるはず。
ということで書きましたいちおうフィリアSS「アガペ」はこれにて終了です。
一人称、最弱、フィリア、アガペ、フォーというキーワードをごちゃまぜにしたらこんな話になりました。

その9に当たる部分を1時くらいから書き始め、2時まで書いて寝ようと思ったら、なんか6時30分近い。
ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワッソイ!
当初は10KB前後の文章量で終わると思ってたらテキスト量が恐ろしいことになっていました。
完成後に見るとほぼ50KBになってる。これぞ孔明の罠。
これでも端折るところは相当端折ったつもりなのになー。
書きたいところをもっと丁寧に書いていたらとんでもないことになっていそうだ。

ということで、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
記者ヨネヤマより感謝を込めて。

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Comment

無題

  • あおい
  • 2007-07-15 10:58
  • edit
お疲れ様なのですよ~♪

個人的にすごく好きかもしれないこの終わり方。

ところで1つ疑問が残るのですが…

エステルどこいtt

無題

  • ヨネヤマ@管理人
  • 2007-07-15 22:08
  • edit
いつも感想ありがとうございます(´∇`)

エステルはきっと……お星さまになったのですよ、にぱー☆
そう、大切な者は失って初めて気付くのです!
いちおうウィリーさんは(アノフェレスのような)怪しいところを避けて神鋼を通して正規のルートで持っていってもらったのでコアを抜き取られて再利用されているか、あるいは……(´・ω・`)

無題

  • ツルギ
  • 2007-07-16 00:53
  • edit
報酬は確かに受け取りました。
またのご利用をお待ちしております。

と、冗談はさておき、お疲れ様でした。
どん底から這い上がる男の物語堪能させて貰いました。

フィリアよりウィリアムに萌えてしまった自分はどうすればいいですか…

無題

  • ヨネヤマ@管理人
  • 2007-07-16 21:29
  • edit
>>ツルギさん

>フィリアよりウィリアムに萌えてしまった自分はどうすればいいですか…

そっちですか!?
人の趣味はそれぞれなので自分にはなんともいえないです(・∀・)フフリ

まあ萌え萌えという前フリを置いときながら萌えとかあまりない話を書く気マンマンでしたけどね(´∇`)ガハハ
フィリアSSというより、フィリアが出てくるSS止まりですしね。

機会を頂いてなかなか書くのを楽しめたので、今度は男NNでも題材にしてなんか書いてみようかなー。

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